―実践報告―
長崎から、全国各地、そしてスペインやアメリカへと、長い長い旅をして、今この地で皆様と出合うことができ、皆様の前で太鼓を叩ける嬉しさでいっぱいです。
私達の旅は、この世に生まれた時から始まりました。
まだ、お母さんの胸に抱かれ、お乳の匂いと、あったかい母親の愛情につつまれ、心地よく眠っていたころ、おとうさん、おかあさんは宣告されました。
『この子は、障害児です。ふつうの人生をあゆめない』と…
それから、やがて私達は、施設に入寮しました。そこは、一見、ユートピアのように見えるところでしたが、家族や、住み慣れたふるさとを離れての生活は、寂しく、悲しい毎日でした。
『おかあさんに会いたい』『会社で働きたい』『自由な生活がしたい』『ひとりの人間としてみとめてもらいたい』…そう思う毎日が続きました。しかし、そんな思いや願いを伝えたり、まわりの人にわかってもらうのがうまくできないのは、私達の個性であり障害なのです。
でも、そんな時、和太鼓にであいました。
厳しい訓練や、つらい仕事の中で、ふと心安らぐひとときが、和太鼓の響きに耳傾け、自ら太鼓を叩いている時でした。みんなといっしょに太鼓を叩くようになりました。友達もできました。太鼓なら自分の気持ちをだせるような気がしてきました。それまで、ひとの前でしゃべることなんてできない私でしたが、今、こうして皆さんの前に立って居られるのも太鼓と、いっしょに太鼓を叩く仲間のおかげです。
少しだけど自信もつきました。
私達は、何もできないのではなく、何もさせてもらえなかったのだと思います。
今では、みんな職業をもち、自分の働いたお金で、自分で決めて生活しています。
毎日、残業や地域のボランティア活動で忙しいけど、和太鼓が大好きで、暇な時を見つけて練習しています。
今日、私達の太鼓を聞いていただき、私達の思いを感じていただければうれしいです。これからも、希望し、努力し、感謝して、太鼓とともに挑戦して続けたいと思います。