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☆海洋の汚染とその影響

 

私たちが生活する上で、必要な食物を食べ、社会活動をしてゆくには、常に膨大な生産活動や動物としての排泄物が生じます。即ち、生産廃棄物や生活汚水です。これらの極一部は再利用されていますが、それらの殆どは燃やされて大気中に漂うか、地上の汚水として河川に向かいます。しかし大気中の余分なガスや粒子は、沈降したり大気中で雨に混じって、結局は河川に流れ込みますから、人間生活によって生じる廃棄物の多くは海の汚染を招いているのです。人々が現代のような高エネルギー消費生活をしていなかった半世紀前までは、社会生活に伴う環境汚染はそれなりにありましたが、自然の浄化作用の能力の範囲内に在って、バランスが取れていたので、海は海らしく保たれていたのです。しかし、自然浄化の能力を遙に超えた大量の汚染物質が、最終的に海へ流れ込んで、伊勢湾も激変してご覧の通りの有り様です。

そしてこのほかにも海岸を荒廃させる大きな原因として、各河川源流域の開発に伴う自然の荒廃が挙げられます。各河川の流域の森林が縮小ないし消失したために、河川の水の質が変わり、海藻や魚を住み難くしています。また多すぎるダムは、海岸への砂の自然補給を断って、河口海岸の砂浜を痩せ衰えさせてきました。これらの原因の殆どは、人間生活の近代化が及ぼした変化です。

 

☆海洋の油汚染はどうなって行くのか?

 

世界中のいたる所で、船の衝突事故や戦争によって、大量の石油が海洋に流出していますが、いったいどうなっているのでしょうか。海面に流出した石油の一部分は、自然に蒸発したり、太陽の光線で分解されて消えてしまいます。また他の一部の油は、油の塊になって海底へ沈んでゆきます。あとの残りの油は小さな油の粒になって、海面近くを漂います。そして海底へ沈んだ塊も、海面の小粒の塊もやがて殆ど消えて無くなります。それは、石油を好む微生物(バクテリア類)が二酸化炭素と水に分解してくれるからです。このバクテリアの量は、日本付近では、太平洋側に比べて日本海側では少ないようです。然しバクテリアも生物ですから、海水に含まれる酸素を充分に含んでいる必要があるのです。或る試算によると一グラムの石油をバクテリアが分解するのに必要な水中酸素の量は、二・一リットルです。従って汚れの少ない奇麗な海は、油汚染にも強いことになります。

 

☆宇宙に希な地球の海を綺麗に保つために

 

これまで述べてきた海洋の誕生から現代までの極く大ざっぱな『地球史年表』をご覧下さい。ここに取り上げなかった様々なイベントの最後に人類の誕生があります。青い地球の紺碧の海の中から生まれた生命が、いまも偉大な自然の仕組みに支えられていることを想えば、海で遊ぶとき、海を愛し、海に感謝する心で接し、普段の生活を通して海の汚染を少しでも軽減する心構えが大切です。

 

 

 

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