日本財団 図書館


☆人類の侵した過ちの一つ

 

しかし極く最近、人類の爆発的な増加発展に伴い、主に先進国で、一見、人には安全で便利なフロン系化学洗浄液又は冷媒用のフロンガス類が盛んに使われました。フロンガス類の多くは使用後は空気中に放散されて、高空に到達し、オゾン層のオゾンを大量に分解してしまうことが判りました。オゾンホールと呼ばれるそれは、南極の昭和基地で観測を続けていた日本の観測隊員が一九八二年に初めて発見したものです。オゾンホールは年々広がっており、ついにブラジル南端にまで拡大してきています。オゾン層は生物に危険な紫外線を濾過してくれることによって、この地球上の生物の命を守ってくれているわけですが、その地球環境の安全システムとしての、オゾン層が破壊されたことになります。既にモントリオール議定書により、フロンの全廃の対策はとられていますが、オゾン層を完全に元に戻すには、もう手遅れなのです。フロン類の使用や放散を止めても、今後およそ百年間は、完全な回復はできないだろうと考えられるからです。したがっていま私達に出来ることは、成る可く直射日光に長時間晒されぬ工夫をすることです。特に海で自然と遊ぶ皆さんは、直射日光と海面からの反射光及び砂浜からの反射も加わるので、紫外線を防ぐ帽子・日傘・UVカットクリーム・テントなどの使用が大切です。そしてまた、海で生活してきたプランクトンなどの微生物をはじめ、それらを糧として生活してきた動植物にも重大な打撃を与えてゆきます。したがって海産物は減ることが予想され、この面からも人々の生活を脅かすことになりそうです。さて話を戻して現在の海の様子を見てみましょう。

 

☆汚されてゆく海洋

 

伊勢湾はかって、白い砂浜と幅広い黒松林の海岸に囲まれた、汐の香り豊かな、紺碧の海でした。松林では、初夏に松露(丸い形をした春茸の一種で食用される)が採れたし、夏の松の木陰は全て涼しい無料休憩所でした。海岸から数十メートルには海藻が繁っていて、海岸から見ると、深さと岸からの距離が一目で判るようになっていました。真っ白な砂浜には、沢山の海藻や貝殻や海酸漿(ウミホオズキ)などが帯状に連なっていて、四季折々に誰でも直ぐ行ける楽しい遊び場でした。それが今海岸に立つと、白砂青松の多くは名残りを留めず、ポリ袋やプラスチック容器のかけら、ペットボトルからタイヤ・廃材などの塵屑が散乱し、貝殻や海藻は少なく、異臭がして海の香りは無く、海はコーヒーを薄めたような汚れ色です。ここ半世紀の間に、身近だった海辺は、激しい変貌を遂げました。そして伊勢湾に連なる外洋、全世界の海洋の汚染がいまや深刻に取り沙汰されております。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION