これらは、主に、当庁のSafetyとしての能力が発揮された部分である。
しかしながら、前述したような海上保安業務の国際化は、主にSecurityの面で急展開している。これまで、この分野におけるODAによる国際協力は活発ではなかったが、平成10及び11年度、運輸省のODA予算により行われた「薬物海上取締官養成事業」は大きな成果を収めており、また、本年4月に行われた海賊対策会議では、今後、日本において、海賊を始めとする海上犯罪に関するセミナーについて検討していくことも発表された。
このような日本におけるセミナーでは、開発途上国の技術の向上を図りつつ、人的ネットワークの構築に大きく寄与することができる。また、専門家の派遣においては、技術移転を行いながら、同時に情報の収集といった面でも成果を上げることが可能である。これらは、相手国の海上保安体制の充実を図りながら、当庁としても、業務に資する面が大きいことを理解しなければならない。
従って、今後の当庁の国際協力は、開発途上国からの要請に基づき行っているという受け身ではなく、その国際協力が、海上保安業務にも資するものであることも考慮した、積極的な姿勢が求められるようになろう。