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V. こどもL.E.C.センターにおける心理療法

 

1. こどもL.E.C.センターの心理臨床の場としての特徴

心理療法にはさまざまな学派があり技法がある。そして、心理療法家は自分にあった理論や技法を基礎により多くのクライエントを援助すべく探求を重ねている。また、心理臨床の場は多様化してきており、多様化したニーズにいかに応えるかも心理療法家に望まれるものである。

従来のクリニック・モデルといわれる臨床形態は、クライエントはクリニックへ訪れ、心理療法家との治療契約のもとでセラピーをおこなうものである。このモデルは、クライエントが生活する場とセラピー・ルームは物理的に離れた場所にあり、「現実」と「特別な空間」という「場」の持つ意味がセラピー自体に大きな影響力をもたらす。この「特別な空間」の中でクライエントはセラピストと共に自分自身を見つめる、探す、崩す、組み立てるなどさまざまな作業を展開する。そして、「特別な場」から持ち帰られた「何か」は「現実」の生活の中で次のセラピーの時までクライエント自身によって色付けられ、生活の中に反映される。これは「現実」と離れた場所だからこそできる作業である。

一方、こどもL.E.C.センターでは心理臨床の場として特徴的な点がいくつか挙げられる。1]生活の中に治療の場が含まれる、もしくは近接するため、「場」の持つ意味が限定される、2]子どもたちが集団で生活する場である、3]家族との関係を重視する、という3点である。

 

2. こどもL.E.C.センターにおける心理療法の特徴

(1) 生活の場に含まれる、近接する治療の場

前述したように治療の場が生活の場に含まれる、もしくは近接する環境では、「特別な場」としてのセラピーの意味が薄まってしまう。しかし、「現実」の場である生活の中で、クライエントの問題となる行動が「生き生き」と展開されている様子を観察できる。よって、セラピストは、こどもの問題をより現実に近いレベルで扱うことができる。つまり、子どもの問題に対して、セラピスト個人でなく生活全体の関わりとして子どもを取り巻く治療的な環境を作ることができるため、「場」の「特別さ」はセラピー・ルームよりも施設全体の性質として維持されるものと考えることができる。

一方、セラピー・ルームにおける心理療法では、セラピスト−クライエント関係を構築することが大きな課題となる。対人関係に何らかの問題を抱える子どもと1対1の信頼関係を築きあげることはとても重要であり、この関係の構築が治療全体を大きく左右する役割を持つ。

また、セラピー・ルームでのテーマとして、日常生活に近いことが扱われるのも特徴的なこととして挙げられる。子どもは、日常生活の中で起こった葛藤や不安を「守られた場」で何らかの形で吐き出すことがある。セラピストはそれを受け止めながら子どもの内面を充実させ、現実生活での適応がうまくできるよう配慮していく。

当センターには、カウンセリング2部屋、プレイルーム、箱庭ルーム、遊戯治療室2部屋があり、子どもの状態にあわせ、週1回〜2週に1回セラピーを行っている。

 

 

 

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