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考察と結論:

蒸留水(AD)に浸漬したマウスの肝組織は、冷蔵庫中でも比較的早い時間に細胞の自己融解を起こし組織崩壊が進行するが、これは通常見られる一般的な現象である。特にこの度の実験では通常の冷蔵保存状態でなく、水に浸漬した状態であったので浸透圧によって水が組織内に浸透し、細胞や組織の膨化を早めた可能性が大きい。特に10〜14日後では典型的な死後変化と言える変化をきしていた。水の浸透圧による組織の障害を検証するためには、等脹液に浸す実験や、表面を湿らす程度の少量の水を付けた実験結果と比較する必要があろう。

これに対し、鮮度液(DSW)を用いた群では肝組織の保存状態が良く、核の消失もほとんど見られなかった。また自己融解の所見や細胞間結合の解離が見られないのが特徴であった。崩壊を起こしている細胞でも、原形質内の空胞変性のような形態を示し、細胞の結合が解離する現象は無かった。

結論として、蒸留水と鮮度液の2群の間には、臓器・細胞の保存状態に明らかな差が見られ、鮮度液に浸漬した肝組織の構造や細胞形態は良く保存されていた。しかし、この変化の機序や原因を示す所見は特に無かった。

(組織像の写真を次ぺ一ジに掲載)

 

 

 

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