(2) 海水の比熱データより考察する富山湾での肥沃化実験
この比熱のデータから富山湾の肥沃化実験(科学技術庁、水産庁、富山県を主体に研究所や大学の研究者が参加し、深度250mの海域から日量26000トンの海水が汲み上げられ1989〜1990年にかけて行われた。)で海水混合による平衡温度を計算すると、約19℃となることが解る。表層の温度が24〜26℃であるから5〜7℃も急激に海水温度が低下することになる。つまり、海水の混合液それ自身が低温のために自動的に潜り込んでしまう。
逆に、比熱のデータからどの位の海水ならば肥沃化実験を成功させることができるのであろうか。例えば、海水の混合により、表層水の温度より1℃低い場合ならば、富山湾の例で約2%弱の日量3200トンである。
日量52000トンの表層水に3200トンの深層水を洋上で撹拝し、それを放流すると55200トンの混合水が海面より約100m下に滞留させることができる。これを自然湧昇の様に行うとするならば、日量約1トン弱の海水を放流し続ければいいことになる。
以上の考え方は、海域の肥沃化という、あくまでも人間の一方的な都合を実現しようとした場合である。
2.2 鮮度液の冷却曲線
現在鮮度液は、漁業関係や医学関係で目覚ましい成果を上げている。鮮度液に使用されている中層水や深層水は超微量であるというのが特徴である。深層水が超微量ということは、無いと言うことではなく、それが例え百万分の一であっても、またそれ以下であっても、入っているということが重要なのである。
例えば、鮮度液が零度で凍らないということは、海水のように何かが普通の水より多く溶解しているか、内部エネルギーが何らかの理由で高くなっていると考えられる。
これを証明するには鮮度液または鮮度液に近い液を作って冷却曲線を測定すれば解るはずである。平成10年度融合化開発促進事業報告書P92に典型的な冷却曲線の図が出ている。鮮度液のように、零度で凍らないということは、温度をどんどん下げて過冷却状態になったあとに氷と水の平衡状態の温度が零下何度かに成るということである。
海ヤカラ1号より取水した海水を用いる鮮度液は、沖縄県海洋深層水開発協同組合より生成製法は公開されていないために、以下の様に条件を種々変化させて冷却曲線を測定した。