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2-9 カロリーメータによる深層水及び鮮度液の熟力学的挙動の解析

 

1. はじめに

深層水を利用した鮮度液は多方面ですばらしい成果を上げている。この鮮度液(注)の海水濃度は従来の概念を著しく変える超微量である。重要なヒントは零度以下でも凍りにくいということである。このことは鮮度液が何らかの理由で内部エネルギーがかなり高いことを意味する。この証明のために、表層水、中層水、及び深層水の比熱の測定を行った。測定法は示差走査熱量測定(DSC)で神奈川大学理学部化学教室、西本右子先生の協力のもとに行われた。

(注)「鮮度液」は、沖縄県海洋深層水開発協同組合が海ヤカラ1号から取水した深度600mと1400mの海水を調合希釈生成した海水と水のみからなる液体である。現在、水産業で一部使用されている。

 

2. 熱力学的実験

2.1 海水の比熱の測定

(1) 測定結果

 

表2-41 示差走査熱量測定(DSC)による測定値

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DSCの計測データを図2-51、2-52、2-53に示した。比熱の値から中層水や深層水は温めにくいことが解るが、このデータから上記の鮮度液の熱的挙動を説明することは著しく困難である。比熱はもともと中層水や深層水が表層に流入した時にどの位の熱量変化が起こるか等を議論するときに有効な量なのである。比熱の測定以前に、比熱は塩分濃度に比例するのではないかと考えていたが、逆比例することが解った。沖縄県海洋深層水開発協同組合の平成10年度融合化開発促進事業報告書P71の海ヤカラ1号設置海域に於ける塩分の鉛直分布によると、表層海域が最も高く次が深層水で中層水は低くなっている。しかし、表2-41の様に比熱は、中層水>深層水>表層水である。

 

 

 

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