第2章 調査研究事業
2-1 洋上設置型海洋深層水取水装置の開発及び修復技術の開発
1. 概要
平成9年2月から今日までに、洋上設置型海洋深層水取水装置として「海ヤカラ1号」及び「海ヤカラ2000」の2基が沖縄本島南方洋上に設置された。設置以来台風や季節風による高波に長時間遭遇したり、漁具との接触によると思われる損傷等が発生してこれらに対応する過程において多くの知見が得られた。中でも「海ヤカラ1号」は沖縄県海洋深層水開発協同組合が深度1400mと600mから深層水を揚水するために設置したもので、我が国における洋上設置型海洋深層水取水装置の先駆的役割を果たした。これは未知の分野への取り組みであり台風銀座の沖縄の南方洋上に設置して台風等による損傷・復旧を幾度も体験してきたことにより実海域における貴重な運用実績が得られた。これらは今後の洋上設置型海洋深層水取水装置に関する課題の洗い出しに役立っものと考える。
本章は、洋上設置型海洋深層水取水装置の洋上設置の信頼性向上を図るために既製の「海ヤカラ1号」に再検討を加え、改造及び再設置を実施した経緯と実績についてまとめたものである。
2. 「海ヤカラ1号」の改造
2.1 改造の方針
(1) 「海ヤカラ1号」改造の基本的な考え方は次の通りである。
a) 取水管システム組み立て作業の合理化
b) 取水管システム設置作業の合理化及び信頼性確保
c) 取水管システム設置後の信頼性確保と長寿命化
d) 深層水取水流量の安定化
e) 深層水自噴性能の改善
f) 既製の「海ヤカラ1号」本体の取水管連結方式を改善
(2) 「海ヤカラ1号」及び「海ヤカラ2000」の運用実績から改造計画を立案する。
台風等の高波浪に対する対策には限界がある。万一、高波浪により取水管システムが損傷する場合を考慮して容易に復旧対策が可能なシステムとする。
(3) 設置海域の安全性を考慮して改造する。
「海ヤカラ1号」及び「海ヤカラ2000」の作業実績から設置海域における安全作業可能な限界波高は役1.5mである。
(4) 取水管損傷の有無を容易に判断出来る手段を立案する。