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看護婦さんは心配顔のお母さんやおばあちゃの話をよく聞いてくれて、「私たちは先生と連絡をとりながら、できる限りのお手伝いをさせていただきますので、安心してください」と言ってくれたので、ほっとしました。

おばあちゃも笑顔にかわっています。

家に帰ってきたおばあちゃは、長い間住んでいたところに帰れて本当に嬉しそうでした。

ピースハウスからは先生がほとんど毎週、往診に来てくださったし、訪問看護婦さんも週に1、2度は来てくれたのでおばあちゃは安心して過ごすことができました。

お母さんも「みんなが支えてくれるから、退院しても安心ね」と言っていました。

 

再び入院

 

ある日曜日の朝、おばあちゃが「今日はとても息が苦しいの」と言いました。お母さんと私は、一生懸命おばあちゃの背中をさすってあげましたが、いっこうによくなりませんでした。

お母さんがホスピスの先生に電話をしました。そうしたら、しばらくして先生が往診してくださいました。先生はおばあちゃの胸に聴診器を当てて、「大丈夫ですよ。苦しいのは必ずよくなります」と言われたので、私は少し安心しました。でも、お薬の調節をするために、また入院することになりました。私はとてもがっかりしましたが、おばあちゃが「また元気になっておうちに帰るからね」と言ったので、私は「私が迎えにいくからね」といって指きりげんまんをしました。

 

富士山

 

おばあちゃと病室でお話をしているとき、看護婦さんが「○○ちゃん、いま富士山がとってもきれいだよ」と声をかけてくれました。

私はおばあちゃの手を握ってホールに行きました。このホールの大きな窓のまっ正面に、夕焼けの中に紫色の影になった大きな富士山が見えました。ホールには何人かの患者さんや家族の方が来ていました。

真っ赤な太陽が山々の向こうにどんどん沈んでいきます。空の色がみるみる変化します。

私は今までこんな大きな日没を見たことがありません。

ホールの人たちもみな無言です。

気がつくとホールはすっかり暗くなっていました。なんだか少し淋しくなっておばあちゃの手を引いて部屋に帰ってきました。

 

お風呂に入る

 

きれい好きなおばあちゃは、入院してからも自分で毎日お風呂に入っていました。でも、ここのところ調子が悪くてお風呂に入ることができません。看護婦さんとおばあちゃは、お風呂についてもいろいろ話し合っています。お母さんが教えてくれたのですが、看護婦さんはおばあちゃの、お風呂に入りたい気持ちと周りに迷惑をかけたくないという気持ちをとてもよくわかってくれているようでした。おばあちゃは、看護婦さんに手伝ってもらい、寝たままでも入れるお風呂に入ることにチャレンジするようです。こっそり、入浴中、お風呂場の前に行ってみると看護婦さんとおばあちゃの楽しそうな声が聞こえたので安心しました。

 

感謝と別れ

 

おばあちゃの入院以来たびたび訪ねてくれるチャプレン(牧師先生)が来てくれました。

 

 

 

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