約2時間見学のあと、私は友人のDr. McGovernを訪れ、アメリカオスラー協会のことについて話し、私のオスラーに関する著書がDr. McGovernの斡旋でデューク大学出版会から出版されることへのお力添えにお礼を述べた。
今日、アメリカオスラー協会が立派に成長したのは、Dr. McGovernの経済的ならびに精神的貢献には絶大なものがあったからである。
3月29日(木)
7時30分-11時:Texas Univ. Medical Centerには、M. D. Andersonがんセンターのほか、テキサス小児病院、聖ルカ病院、メソジスト病院、Ben Tamb総合病院、Texas Heart研究所、歯科大学病院、Hermann病院などがある。これらを総称してTexas Medical Centerと呼び、Texas大学医学部とBaylor医科大学と、Texas大学歯学部がこれに参与する。この中のHermann病院は400床をもつ総合病院であるが、この病院のCardiology部門を見学した。
最近の米国は心臓外科とか循環器内科とはいわずに、それが総合された部門、ハートセンターとして機能するところが増したようである。この病院のCCUとICUを見学したが、外科手術の翌日から内科医がフォローし、受持医のインターンやレジデントをフェローやアテンディング医がサポートする。担当医のチャートの記載も詳しいが、アテンデイングの診察所見とコメントも実に詳細で立派に書かれていたのには驚いた。日本の実情とはかなり隔たりがあるように感じた。
次いでThe Institute of Molecular Medicine or the Prevention of Human Diseasesを見学した。ここは「人間のいのちをもっと長く、かつ充実したものとなすための医学を実現するための研究を行う施設である」と説明されている。院長のDr. Ferid Muradは67歳のとき、NO2の研究で1998年にノーベル医学・生理学賞を得た方であるとのことであった。
ここはID部門の研究を行う目的で初代のM. D. Low所長が8,000平方フィートの広さのスペースで設計されたもので、現在は分子生物学の研究者H. J. Muller-Eberhard博士が所長である。現在10のプロジェクトのうち3部門の研究、すなわち1)免疫および自己免疫疾患、2)循環器疾患の研究、3)遺伝子コーピングの研究などである。
案内された藤瀬研一助教授のアポテーシスに関する研究室も見学した。日本から留学している研究者はNIHその他からの研究費の助成があっても、そこから助手の給料や自分が研究する上の諸費用を出さなければならないことが多く、なかなか苦労のあることがうかがい知れる。
以上、私は北米の医学教育と研究と診療のメッカといわれるボストン市のハーバード大学関連施設、ここではマネージドケアのために病院経営のむずかしい地域と、経済的には恵まれているTexas Univ. Medical Centerを短期間とはいえ訪問し、多大の情報が得られたことに対して感謝したい。