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LPクリニクだより

-第21回健康管理担当者セミナーから-

肥満と生活習慣病

 

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第21回健康管理担当者セミナーが去る11月8日、笹川記念会館会議室で開催されました。近年、多くの職場では肥満が原因で病気を引き起こしているケースが増加していることもあり、今回はここ数年で最も多い56団体・67名が参加されました。

 

日野原理事長のお話から

LPCでは発足した1973年(昭和48年)からすでに「習慣病」という言葉を提唱してきました。しかし、厚生省がその概念をとり入れるには、20年もかかっています。一番理想的なのは、成人時の体重の1割程度の増減範囲にとどまることです。本日はLPC式のアプローチをご紹介します。このようにセミナー開催にむけて挨拶をされました。

 

肥満と肥満症

岡崎倫正 LPクリニク所長

生活習慣病の二大危険因子は肥満と喫煙です。肥満は脂肪組織が過剰に蓄積した状態で、その判定は体重(kg)を身長(m)の二乗で割った指数BMI(Body Mass Index)を用い、指数25以上が肥満とされています。理想指数は最も疾病の少ない22で、指数と合併症は相関しています。体重過多のうち、減量を要する合併症を有する場合を“肥満症”と呼び、医療の対象とされます。肥満は脂肪沈着の分布により皮下脂肪型と内臓脂肪型肥満に分類され、内臓脂肪型肥満が特に生活習慣病と関連しているといわれています。これらの治療には食事・運動療法が必要です。

 

肥満と食事

寄崎靖子 LPクリニク栄養士

肥満の食事療法は、糖尿病・高脂血症・高尿酸血症・高血圧・肝機能障害・脂肪肝・心疾患等の人が対象となります。食事への関心を高め、食事記録をつける食事の減量・間食の中止・定期的血液生化学チェックなどが必要です。

食事は、生育歴・家族歴・職業を含む環境・性格・家族構成・メンタル問題と関係するので、目的遂行のための問題点をあげ、本人に自覚してもらうことが重要です。減量指導は、年齢段階別の生活活動強度区分に基づき、エネルギー・脂質・たんぱく質・ビタミン・ミネラル等の日本人のための栄養所要量基準表を用いて行います。

 

肥満と運動

佐藤淳子 LPクリニク副所長

二次予防は運動療法とともに食事療法・行動療法等複数の調整が効果的です。肥満は内科的疾患以外に膝関節症・月経異常も起こします。運動による消費エネルギーは思ったより少ないのですが、運動はインスリン感受性の向上、血中脂質の改善、心肺機能の増強、筋力・体力・運動能力の向上、骨密度減少予防などに効果的です。しかし、運動前の医学的チェック、適性心拍数(最大心拍数=<220−年齢>回/分)の確認が重要です。運動種目は手軽、持続性、消費カロリー予測可能なものを選ぶとよいでしょう。ナースは、生活習慣の変容を生涯にわたって継続していくチーム医療の要としての役割を果たしています。

 

肥満症へのアプローチ-実践例より

四分一光男氏は減量に成功し、血糖値を正常に保つ生活をされています。氏の日常生活を映したビデオが紹介されました。10年前疲れを覚えて受診し、異常に高い血糖値を知り、早速、食事・運動療法を始めたそうです。タバコを止め、毎日2万歩に近い歩行、ベータカロチンの摂取をはかる大量の野菜中心の食事に切り替え、健康な今日に至っていると話されました。

 

肥満と循環器生活習慣病

久代登志男 日本大学医学部助教授

高血圧遺伝子は、立位歩行・食糧不足・寿命40歳時代の生存のための食生活習慣の名残です。食糧豊富な今日では、この食生活習慣は肥満につながります。寿命80歳時代の肥満は疾病を誘発する原因となりますから、栄養指導、運動療法、行動科学、内分泌・代謝・循環器病学等のあらゆる面からアプローチしています。減量療法を挫折させないために、個々の生活状況を把握することも大切です。BMI25程度(こぶとり)の死亡率が一番低く、小児肥満は更年期障害発生率が8倍もあります。

 

 

 

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