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教育医療

Health and Death Education, Dec. 2000 vol.26 No.12

 

クリスマスに想うこと

 

11月も後半になると、街はクリスマス一色に染め上げられます。そしてあちらこちらで、ヘンデル作の『メサイア』の中のハレルヤコーラスが演奏されます。

今年は、早くも10月14日に、『ホスピス運動の輪を世界に』の祈りを込めて、世界中のホスピスがハレルヤコーラスを歌い継ぎ、24時間で地球を一周しようという精神運動が開催されました。

これはイギリスの電電公社(BT)の企画によるもので、日本からは、私たち財団が7年前に設立した独立型ホスピス・ピースハウスが呼びかけに応えて、前回の1997年から2度目の参加をいたしました。そして、小田原少年少女合唱隊を指揮する桑原妙子先生のもと、その卒業生で編成したマルベリー・チェンバークワイア合唱隊が素晴らしいコーラスを披露し、このイベントに花を添えてくださいました。さらにハレルヤコーラスでは、LPCのボランティアコーラスと私も加わり、会場の参加者も一体となった祈りを込めた歌声が、200名を収容する会場内に響き渡りました。ホスピス運動の2000年を締めくくるこの世界的イベントが、さらに21世紀へと引き継がれ、皆様の心に深く定着していくことを心から願っています。

ところで、メサイア(またはメシア)という言葉は、ヘブライ語です。このヘブライ語で書かれた世界で一番古い聖書の原典を展示した大東京大聖書展が、去る11月2日から19日まで、東京オペラシティの特設会場で展示されていました。私も最終日の夕刻にかけつけて、キリスト降誕2000年を記念したこの展示を見ることができました。

このヘブライ語のメシアは、ギリシア語では「油注がれた者」という言葉に訳され、これが救世主としてのイエス・キリストを象徴することになりました。

キリスト(Cristo)というのは、メシアすなわち救世主(世の中の人々を救う人)ということです。そしてイエスというのは、ただの呼び名で、太郎とか次郎というのと同じです。つまり、イエス・キリストは、救世主イエスということになります。

「メサイヤ」は、世界各地でクリスマスやイースターに毎年上演され、その規模は年々大きくなっています。その中の「ハレルヤコーラス」は、「ハレルヤ」を4回続けて歌い終わりますが、その荘厳さに思わず起立してしまったという逸話から、総員起立して聞くことになったというエピソードはあまりにも有名です。「ハレルヤ」とは、「主をたたえよ」という意味で、音楽によく用いられ、宗教的感動を表す言葉だそうです。

クリスマスのエピソードというと、なぜモミの木が飾られるようになったかということを、以前本誌でもご紹介いたしました。ドイツの先住人が常盤木であるモミの木を神聖な樹としてお祭りに飾る習慣があり、1517年に宗教改革を行ったマルチン・ルターが、クリスマスの前夜に、雪の積もったモミの木の梢から望んだ夜空の星の美しさに感嘆してお祝いに使ったということです。果たして、21世紀のクリスマスにも、そのような美しい星空を望むことができるのでしょか。

20世紀の最後の月に、新しい世紀はどうあってほしいか、一人ひとりが考えていただきたいと思います。私は、今日本が失ってしまった家族をとり戻すことが、何にも増して急務であることを感じています。三世代の同居、家庭における語らいから、よい習慣が生まれ育っていくことと信じています。

LPC理事長 日野原重明

 

 

 

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