日本財団 図書館


おわりに

 

高齢社会とは80歳、90歳の人口増が中核ですが、この年代は痴呆の出現率がそれまでに比して飛躍的に高まります。大体20%台、つまり4〜5人に1人は痴呆があるという現実の下です。もはや痴呆は避けて通れない課題です。しかし、痴呆という知的、精神的な機能の欠落についての理解は十分とはいえず、痴呆高齢者の心の理解もなおざりにされがちです。

人類は高齢社会を迎えて身体と精神の衰えに対してどのように取り組むのかが問われています。人生の最終段階になって痴呆になったとき、“ああはなりたくない”“ああなったら死んだほうがましだ”というような社会とは何なのでしょう。その人にふさわしい生と死を保証する必要があります。痴呆高齢者に対してどのように取り組むかはその社会や一人一人の質を問われることでもあるのです。

 

本誌は、ライフ・プランニング・センターの講座「訪問看護・臨床ナースプラクティショナーのための必須技能セミナー」『痴呆を伴う老人の理解と対応』での講義に加筆・訂正したものです。

 

プロフィール

竹中星郎(たけなか・ほしろう)

1941年生まれ。

1966年千葉大学医学部卒。

1968年東京都立松沢病院勤務、1975年信州大学医学部精神医学教室を経て、1979年社会福祉法人浴風会病院(副院長)。

1997年放送大学客員教授、1998年大正大学人間学部教授。

 

著書(老人関連)

『老年精神科の臨床』(岩崎学術出版社)

『高齢者の孤独と豊かさ』(NHK出版)

『ナースのための精神科看護(共著)』(日本看護協会出版会)

『老年期の心理と病理』(放送大学教育振興会)

 

 

 

前ページ   目次へ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION