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痴呆の人にせん妄が生じたときにそれを見分けるのはむずかしいのですが、いまいった4点を頭に入れておくと便利です。たとえば痴呆の患者さんについて、この1ヵ月急に痴呆が進んだ、ボケがひどくなったと言われたら、このように日時を特定できるのは痴呆ではないかもしれないと考える必要があります。痴呆の人にその時期からせん妄が生じたのではないかと。そして、痴呆とかボケといっている状態を丹念に聴取すると、悪いときもあるけれども、いいときもあるとか、時々そうなるというように動揺しているとわかったら、多分せん妄だろうといえるわけです。

痴呆の人のせん妄を見分けることが重要なのは“せん妄の成因”と常にからんでくるからです。それは治療に直結するからです。

 

3) せん妄の成因(表4)

せん妄を引き起こす原因は次の3群について検討する必要があります。第1は身体的な疾患(脳を含む)です。第2は薬、第3は精神的な要因、社会心理学的要因ともいいます。高齢者の場合はこの3つの、どれかが関係しているか、あるいは複数がからんでいることが多いのです。

先ほどせん妄の特徴を4つ上げましたが、日時が特定できるということは、その時期に薬が変わっていないか、その時期に体調の変化がなかったかという視点で見直すわけです。薬による場合は、大半が1〜2日から1週間以内に影響が出ます。パーキンソン病とか頻尿治療薬のように長期に飲んでいておかしくなる薬もいくつかありますが、その日か何日か前に新しい薬が追加されていないか、あるいは処方変更になっていないかを調べてみることです。

 

 

 

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