輝くいのちと終末の意味
“スピリチュアル・ペイン”をめぐって
野村祐之
青山学院大学講師
“健康”を見直す−WHOの新しい定義
昨年の夏ごろから医学校、看護学校、病院、ホスピス関係の方からたびたび問い合わせの電話をいただきました。まるで打ち合わせたように同じ内容で、「スピリチュアルを日本語でどういったらいいか」というのです。どうしたことかと思ったら、最近WHO(世界保健機関)が「健康」ということを再定義して、いままでは「身体的に良好な状態」としていたのを「身体的のみならずスピリチュアルに良好な状態」と改定することになったのだそうです。そこで、この“スピリチュアル”をいったいどう訳したらいいかが問題になったというのです。
スピリチュアルというのはキリスト教の神学用語で、「霊的」というのが基本的な訳語ですのでそうお答えすると、「それでは困る」といわれました。「うちの病院にも『霊』の字のつく部屋が地下にあるけれど、まさか患者さんに『霊的ケアもします』などといえない」というのです。