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提案要旨

子育てグループと保育

高橋紀代香(南海福祉専門学校専任講師)

 

地域の子育てグループに対してどのような支援が行われているのか、支援する上での課題は何かについて、保育園での指導者養成の実際の取り組みを例に考えてみたい。

子育てグループは、家庭という私的空間だけに育児を閉じ込めず、地域の中に解放していきたいという母親たちの願いで生まれてきた。特別に保育にたずさわる人を頼み親子分離型で行っているグループもあるが、多くは親たちが自主運営し役割や担当を決め親子が共に遊びや活動に参加しているというものである。

高石市のN保育園が子育てサークルで活躍している人や子育てサポートを考えている人たちのために開いた平成12年度の「育児アドバイザー養成講座」は、リーダー養成を課題とした次のような内容である。

1]育児アドバイザーとは、子どもの権利条約 2]子どもと心をつなぐ遊び 3]心を育てるお話・絵本 4]保育士体験 5]「聴く」ことの大切さ 6]リズムで楽しく−歌あそび 7]子どもの発達とかかわり と組まれていて、1講座は90分、月に1回(7月〜1月)、場所は保育園の一室、講師は園長・主任保育士・保育士・専門学校教員である。

育児アドバイザー養成講座を保育園が取り組んだ利点として、1]何といっても集団生活を通して育つ子どもたちの生き生きした姿を体験的に知ってもらえたことが大きく、専業主婦の人たちに働いて子育てすることが特別なことではないという意識と保育園への信頼感が生まれたと思う。また、2]受講生Aさんの「保育技術的な面でとても参考になったが、それ以上に子育てグループの横のつながりが出来たことが嬉しい」という感想の中に、保育のハウツウにとどまらず仲間づくりをコーディネイトすることが大切ではないかと思うのである。高橋も1講座を担当したが、若い母親たちの共同子育てへの熱意にふれその真剣さ、積極性、権利意識の高さを感じることが出来た。受講生たちが学んだことを仲間たちに伝えていくかかわりの中で、リーダーとして育ちまた個人的にも成長していってくれることが期待できる。

各園での事例をだしての討議にあたり、次の点を提案したい。

1] ここでは自主運営のグループに対するリーダー養成の例であったが、子育てグループへの支援で保育園が担う役割で大切なものは何だろうか。

2] 入所児童の保護者から時に「私らは保育料払っているのに…」といった不満の声をきく。在宅の子と保育園の親子を分けないノーマライゼーションの考えをどう理解してもらうか手だてを考えたい。

3] 年々、特別配慮を必要とする子どもが増加する中で、地域支援に経験豊かな保育士が主体となってかかわることが多くなるが、日常保育の質の低下を招いてないか。もしそういうことがあれば、どう克服すれば良いか。

 

 

 

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