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(V) 総括・まとめ

 

1] 今回の3ヶ国4都市視察で学んだことを総じて言えば、欧州のどの都市も、自分たちのまちをよくするために行政・市民団体・市民が皆真剣に努力をしていることを肌で感じたことである。

2] どの国でも都市は年々変化を遂げている。そしてそれぞれの地域毎に自分流のあり方を模索して発展している。(産業、工業・商業・観光も教育も、交通施設、情報等も)

3] ともすればわれわれはヨーロッパは昔からあのような石造りの都会であったから歴史が残り、観光の名所になると考えがちであるが、ヨーロッパ各都市では行政も市民も自都市の歴史的価値を深く認識し、それを守るために法律、規則を決め、協議し合って進めていることが印象深い、スネークでもウルムでもミラノなどでも貴重な財産を守るために試行錯誤を今も続けている。年々変化している。法律規則があるから出来るというだけでもなさそうである、年々工夫改善をし、住民との協議、商業者(店)との話し合いも行われている。

4] ドイツでは特に第2次大戦の戦火で大被害を受けたにもかかわらず、戦後復興の過程で元のとおりに再建した建物も多いと聞く。また、戦後社会構造の変化で中心市街が空洞化したが10〜20年前から街中再生都市計画を実施商店を貼り付け、郊外に出た住民を呼び戻し住まわせ、夜も人の住むまちに復活させた。(スネーク、ウルム、ミラノ)夜、人の住まないまちは衰退する。商店の2階には必ず人が住む。商店の看板なども規制を守り、美観を大切にする。商店の販売品目も細かく規制する、それで初めてそのエリアにどんな客が来てくれるか、客の誘導が出来る。それを行政(市)が実行している。

5] 自分の住むまちは自分たちの考えでよくする。「古い街並みは貴重な財産である」ことを住民や商業者は認識し協力している。

6] スネークでは中心市街地の景観保存の法律が100年ぐらい前に制定されて連綿と続いている。どの都市も保全建築物に手を加えることは市役所と厳密に協議の上実施されなければならない。外面は変更できない。しかし内部は住民が現代生活を十分できるようになっているとのこと。

7] 保存建築物の改修費は新築よりも50%くらいはコスト高になるようだが、補助金制度があるイタリーでは古い建築物の改修技術か進んでいる。職人も育成されている。(日本では一新する方か効率よいし低コストであるため、補修改修よりも新築される。改修の職人技術は失われてしまう。)このように歴史的市街地保存には行政(市)は大変な努力をし苦労している。公共投資もされている

8] 都市マスタープラン(まちづくりのコンセプト)が出来ていて、その実施に邁進している姿が非常に印象的である。マスタープラン(長期基本計画といってもよい)の必要性、重要性を痛感する。(勝手にどこにでも家や店を建てさせない。壊させない。市が指導する。)

9] 20世紀はモータリゼーションの時代とも言われているが、ヨーロッパては中心市街地から自動車を閉め出す考え方になっている、店の前に駐車できないと買い物客が来ないのでなく、逆に危険だから客が来なくなる。市外からも客が集まってきて繁盛する。

10] 消費者も対面販売を楽しむ大型量販店とのすみ分けが出来ているように見える。

11] スネーク市の基本コンセプトは古い中心市街の建築物完全保存とそこでの商店育成・住宅保全。周辺近郊の継続的な住宅開発(リストラも含む)、産業誘致、大型ショッピングセンターの郊外立地指導。観光開発ではウオータースポーツ振興の一点集中。

12] ウルム市(ドナウ川河畔の古都、世界一の尖塔を持つ大聖堂のウルム)の基本コンセプトは古い中心市街のうち、歴史的建築物の指定保存、改修復元、そしてそのような歴史的街づくり保存と並行して新しい時代への橋渡し、歴史から未来への橋渡しが基本コンセプトである。もちろんウルムは歴史的都市であるが同時に学園都市であり、最先端技術都市でもある。

13] どのまちでも、中核は教会であり、広場であり、市役所である。そこに商店がある。それが市民の集う場である。都市計画はそのようなところに住民を誘導する役割を果たしている。

 

 

 

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