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むすび

98年に始まったこの事業には、多くの思い出があります。まず私達は「温泉」ではなく国際的な意味で「ONSEN」ということばにこだわりました。そして別府という地域を活性化させるための大きな手段として海外の交流から新しい物を地域に生み出すことはできないかと考えました。

先ず8ヶ国のONSEN地の代表の方をお招きし、いろんな立場から別府に対してのご意見をいただきました。国内の方からいろいろなコメントをいただくことに慣れていた(たとえば今更温泉でもないでしょうといった類いの話)私たちにとって海外の方のコメント“あなた達日本人はどうして温泉を入浴だけにしか使わないのか、もっといろいろな利用法があるはずだ、自然の恵みがもったいない”は新鮮でした。

そこまでいうのならヨーロッパはどうなのかということで99年にドイツ・イタリアを12人の若者が自分の目で観てきました。そしてそのあと私は1人でヨーロッパ8ヶ国のONSEN地をまわり、何となく漠然とONSENと医療ということが頭に浮かんできました。

99年11月には3ヶ国から医療の方を中心として4名の方を招請し、ここで明確になったテーマが「ONSENと医療、美容、産物」でした。このあたりから私たち観光を生業としている人たちだけでなく、別府全体にこの事業が受け入れられるようになった気がします。

時系列にいけば99年12月に別府商工会議所と一緒になり『国際ビジネスネットワーク』という組織が発足しました。2000年4月には別府市医師会と別府市旅館組合連合会が連携し『別府ONSEN地療法研究会』を立ち上げました。これには行政から大分県中央保健所も参画し、巻き込みが大きくなりました。

7月には国際ビジネスネットワークを中心に16名の方がイタリア・アバノ市を視察し、秋には健康づくり塾の実施、そして11月にはイタリア及び東京から有識者を招請し、ここでファンゴ(温泉泥)という新しい切り口ができてきました。地域と地域が長く交流を続けていくためには、文化交流そして産業交流も必要です。そういう意味ではファンゴは可能性を秘めています。

いま別府は地域づくりが盛んですが、もしこの事業がなかったら別府はこんなに活性化しなかっただろうと思います。なぜなら殆どのリーダー達を内包してこの事業は動きました。それゆえに横のつながりが密になり、別府八湯メーリングリストなども効を奏して情報の共有化が活発になりました。また、別府ではボランティアを好んで行う風潮がとみに目立ってきました。発言した人が必ず責任を持って実行するというのは傍目にみても、ほほえましいものです。そのようなことはこの事業の目的である「草の根国際交流」にふさわしい傾向でないかと思っています。

町づくりには山あり谷ありで、ひとときも休む暇はありませんが“別府はよくなったね、このごろ元気だね”といわれることが一番の薬です。

 

 

 

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