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別紙(4)-4

 

このシステムによる観測を平成11年1月の航海から開始しています。季節による二酸化炭素の変化を捉えるために、年間4回の観測を計画し、これまでに第1表に示した4回の観測が行われました。それぞれの観測航海の結果を第1図に示します。この図は各観測航海の航路上に、表面海水と海上大気の二酸化炭素濃度差を棒グラフにして描いています。海面から上向きに棒が描かれている場合は、海水中の濃度が大気中より高い、つまり海水から大気へ二酸化炭素が放出される状況であることを表しています。下向きの場合は、逆に大気から海水へ二酸化炭素が吸収される状況であることを表しています。海洋が放出・吸収する二酸化炭素の量はここで示した濃度差(棒の長さ)に依存します。

これらの図を見て明らかなように、観測時期や海域により、海水中と大気中の二酸化炭素濃度差は大きく変化しており、大気−海洋間の二酸化炭素の吸収・放出の様子が海域ごとに異なることがわかります。また、大気中の二酸化炭素濃度は場所的な変化が小さいことから、ここに示された濃度差の変化は、主に海水中の二酸化炭素濃度が大きく変化しているために起こっていると言えます。

今後は、この観測を継続的に行うことにより、海域毎の季節変化などを明らかにし、当該海域での大気と海洋間の二酸化炭素交換量の正確な見積りを求めていきます。

 

第1表 「ありげーたーりばてい」による観測日程

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おわりに

ここで紹介した観測は、交通エコロジー・モビリティ財団が平成10年度より行っている、「一般商船による北太平洋の温室効果ガスの観測システムの構築」によるものです。この事業は、一般の船舶に搭載可能な観測装置を開発するとともに、その装置を実際に商船に設置し年間を通して長期間に渡る観測を行い、地球温暖化現象の解明に資する資料を提供することを目的としています。

一般船舶の協力により、観測船では実施できないような、太平洋を横断するスケールでの繰り返し観測が可能となります。このようなデータを積み重ねることで、地球温暖化に対する海洋の役割が明らかにされていくものと期待されます。もちろん、今回示した航路での観測だけで太平洋全体の様子が理解できるわけではありません。今後は、観測海域の拡充とともに、同様な観測を行っている国内外の機関と協力し、データの流通を促進することで全海洋の実態を明らかにしていくことが重要です。

この事業で観測されたデータは、気象庁が担当しているWMOの「温室効果ガス世界資料センター」を通じて公開することになっており、多くの調査や研究に貢献するものと期待しています。

最後になりますが、このように貴重な観測事業を実施している交通エコロジー・モビリティ財団、ご支援いただいている日本財団に敬意を表します。また、本事業にご理解、ご協力をいただいているコンテナ船「ありげーたーりばてい」乗組員の皆様、株式会社商船三井、エム・オ・シップマネージメント株式会社、ならびに社団法人日本海難防止協会に深く感謝いたします。なお、観測を実施するにあたり、(株)関西総合環境センター、日本アンス有限会社、日本工機株式会社など多くの方々のご尽力があることをここに記します。

 

 

 

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