FFT演算によるデジタルスペクトルCKは
から求められる。ここで、Nはデジタル標本化数、CKは標本化したk番目のスペクトル成分、Xjは波形を標本化したときのj番目の振幅成分を表す。
デジタルスペクトルアナライザは信号をデジタル化してXjを(5・43)式によりN回の計算を行うとk番目のスペクトルCKが求められるので、さらにkについて0〜N-1、のN回計算をして全スペクトルが求められるので、N×N=N2回の計算が必要となる。詳細なスペクトルを求めるため標本化数Nを大きくとると膨大な計算が必要となる。
CoolyとTukyは高速フーリェ変換(FFT)と呼ぶソフトウエアを発見して計算する回数を大幅に少なくすることに成功した。
FFTでは標本化数Nを二つの整数PとQの積に分解して
N=P・Q (5・45)
とおいて全計算回数N2を
N2→N(P+Q) (5・46)
に減少させた。例えばP=4、N=210=1024とすると計算回数は約50分の1に少なくできるので高速でスペクトル計算が可能となる。
デジタルスペクトルアナライザはFFT計算によりほぼリアルタイムでスペクトル表示ができるようになった。
5・5・3 信号と変調
第2章で説明したように信号にはアナログ信号とデジタル信号がありそれぞれ波形、周波数スペクトル、電力、変調度等の測定が行われる。取り扱う周波数帯により直流、低周波及び高周波帯の測定となる。低周波用の測定器は高周波帯で使用できない。正弦波の電圧計や電力計はパルス波のような非正弦波に使用すると波形誤差を生じる。特に雑音のように波形と時間がランダム(不規則)に変動する電圧を測定するときは測定器や測定法に注意が必要となる。