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3・9 機関の無人化と自動化船

3・9・1 自動化船の変遷

我が国では昭和36年に建造された貨物船「金華山丸」にはじめて制御室が設けられ、これがいわゆる自動化船建造の第一歩であるとされている。その後、遠隔監視や自動制御技術の発達にともない、急速に自動化が進み、昭和44年にはタンカー「ジャパンマグノリア」が機関の無人運転を行う第一船としていわゆる日本海事協会のM0符号をはじめて取得した。

また、エレクトロニクス技術の進歩にともない船舶のコンピュータの利用なども検討され、昭和45年にはタンカー「星光丸」にはじめてコンピュータが搭載された。その後エレクトロニクス技術の進歩はめざましく、手軽に利用できるマイクロコンピュータの普及にともない、主機や発電装置、監視警報装置などコンピュータの利用範囲はますます拡大する傾向にある。

一方、少人数でいかに効率よく船舶を運航するかという人的側面からの取組みとしていわゆる船員制度近代化に関する検討がなされ、その一環として昭和58年には運輸省により「船舶自動化設備特殊規則」が制定された。さらに、船員制度の近代化は従来の機関部と甲板部や職員と部員と言った職務範囲そのものの見直しも含めて検討されており、船員制度近代化委員会による総合実験船ではA段階(22名→18名)、B段階(18名→16名)、C段階(16名→14名)、D段階(14名→11名)と小人数運航体制となり、船舶の自動化設備もそれに合わせて集中化、合理化がはかられている。

 

3・9・2 機関の無人運転とその設備

機関の無人運転の目的は船舶運航費(人件費)の節減、船員の労働力の軽減や労働環境の改善等があげられる。このことは機械が人間に代って監視、制御を行うことになるため、人間がこれらを行っている場合と同等の安全性が確保されてはじめてその目的を達成できると言える。

そのため、機関の無人運転に適した設備が必要となるが、基本的には自動及び遠隔制御装置、異常の発生を人間に知らせるための警報装置、装置や機器を損傷から守るための安全装置等を適切に組合せて船舶全体の安全性を確保することになる。

機関の無人運転を行うために必要な設備についてはSOLASや船舶機関規則、各国の船級協会の規則などに定められている。日本海事協会の鋼船規則にはM0船(少なくとも24時間連続して機関の無人運転を行うことができる船舶に付記される符号)に対して概略次の要件がある。

(1) 主機の制御を船橋から行うための船橋操縦装置が必要

(2) 主機、ボイラ、発電装置、重要な補機類の監視、制御を行うための集中制御室が必要

(3) 主機、ボイラ、発電装置、重要な補機類の異常発生を集中制御室、船橋、機関士居住区域に知らせる警報装置が必要

(4) 主機、ボイラ、発電装置等の重大な損傷を防止するための安全装置が必要

(5) 二重装備の発電装置や補機類の一方に異常が発生した場合、予備機に自動的に切換えるための装置が必要

 

 

 

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