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II-2 舶用工業の課題と対策

我が国の舶用工業は、我が国造船所における外航船の受注が昨年に引き続き減少傾向にあること、また、近年の船価の低迷、業界の過当競争体質等により舶用工業製品の生産量及び価格水準は低迷を続けている。このことは、企業体力の低下をもたらしているだけでなく、将来に向けた開発・設備投資意欲の減少を招いており、従業員の高齢化等の構造的問題ともあわせて我が国舶用工業界の脆弱化の進展が懸念される。このほか、造船需要が極端に落ち込んだ状態が続いている内航船・漁船向け機器を主として製造している一部メーカーでは、工場の操業量の確保に困難をきたす深刻な影響がでている。

また、欧米においては、国境を越えた企業同士の合従連衝が進んでおり、市場支配力の強化とスケールメリットの獲得により強固な収益性を持つ企業グループの形成が進展している。さらに、世界的な造船需要のピークアウト及び中国造船業の急激な伸長に伴う世界の造船地図に変化が生じてきている。

我が国舶用工業が、このような諸環境の変化に対応し、今後とも活力を維持し、高品質の機器を供給していくためには、コストダウン、経営資源の有効活用による企業体力の強化、高度な技術力の確保が必要であり、そのため、以下のような取組を推進している。

 

(1) 生産基盤の整備

舶用工業の活性化を図るためには、個々の企業のみならず舶用工業全般において生産にかかわる業務の効率化を図り、脆弱化した生産基盤の整備を推進する必要があることから以下の取り組みがなされている。

(ア) 個々の企業の事業活動の活性化

生産設備の老朽化、システムの旧式化に対応するため、より効率的な生産方式導入による生産効率の向上、新規分野への展開による需要の開拓等、事業革新を進めるとともに提携・協同組合化等による投資規模の拡大等収益率を高め、企業体力の強化につながる取り組みを促進する。

(イ) 舶用機器の標準化

舶用機器の製造は一般に多品種少量生産形態であり、高コスト構造、生産ラインの自動化の遅れといった問題を抱えている。また、ISMコードの導入等海運業界における船舶運航管理に対する要求の高まりに伴い、従来にもまして機器の信頼性の確保、メンテナンスの容易化、部品の安定供給などが求められている。

これらの課題を克服するために、舶用機器のモジュール化や標準化を促進し、生産性の向上及び製品のコスト競争力の強化を図る。

(2) 高度情報化の推進

今後、電子取引が全産業界に拡大するにつれ、舶用工業においても情報化、ネットワーク化等業務取引形態の合理化の可能性が高まっている。また、舶用工業における情報化の推進は、開発・設計・製造部門の効率化、意志決定の迅速化等により生産効率を向上させ、舶用工業全体の活性化につながるものとして期待されてる。このため、造船業界とも連携して、設計・技術情報に関する業界の全般的な情報化を目指すプロジェクト(造船WEB)を推進している。

 

(3) 研究開発の活性化

企業活動のオリジナリティーを確保し、収益性を高めていくためには研究開発が重要であり今後、造船事業者、異種メーカー、大学等との共同研究開発を促すことにより研究資源の効率的な活用、特に中堅・中小の舶用機器メーカーの研究開発の活性化を図ることとしている。

 

 

 

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