5.2 溶接設計
5.2.1 設計にあたっての注意事項
(1) 一般的な注意事項
溶接設計を行うにあたっては次の大前提にたって設計を進めなければならない。
原価を低減するようなものでなければならない。
製作側の設備、技量の実情を十分把握した上のことでなければならない。
溶接を採用するときに、溶接以外のもので、間に合わないかどうか考えてみること。例えば、ブラケットにフランジをつけるときに、フラットバーを溶接でつけるよりも、プレスでフランジ折りした方が早くて、安くできる場合が多い。また必要以上に、溶接の脚長を増したりすることは、溶接の工数もかかるし、第4章で述べたように、変形を多くするのでさけなければならない。
製作側に、高度の技能者が少ない場合は特に、下向き溶接を多くするような設計も考えなければならない。この部分は自動溶接が有利だからといっても、製作側に自動溶接機がなければ、手溶接にしなければならないし、もし自動溶接機があっても、フレームプレーナーによるごとき、高精度の開先を作れない状態にあったならば、完全な自動溶接用の開先ではなく、1〜2層、手溶接を行なってから、自動溶接にする、シールドウエルド用の開先にしなければならない。
以下に、具体的に注意すべき項目をあげる。
イ) 溶着量を減らして、変形を防止する。
第4章で述べたように、一番変形の防止に、有効なのは、溶着量を減ずることである。手溶接よりも、自動溶接の方が、変形量が少ないのも、層数が少ない等の点もあるが、大電流を使って、深い溶け込みを得ることができるために、開先が手溶接に比べてせまく、結果として、溶接量が少ないためである。
またV型開先に比して、X型開先の方が溶着量が少ない。裏溶接が増加するために、技量を要する、開先の成形の手間がV型に比して、難しい等の点があるが、溶着量と変形の点からだけ考えれば、V型よりもX型の方が有利である。
ロ) 溶接しやすく考えること。
立向き、上向きよりも下向き溶接を増加させるように考慮する。狭隘な場所の溶接を極力減らす。設計図上の感じと、現場での感じでは、その場所の作業性にずい分と差のあることが多いが、とかく、狭い場所の溶接作業は能率があがらぬ上に、良好な溶接が施行されにくい。はなはだしい場合は、見えないで勘だけに頼らねばならぬところもある。このような場所では、欠陥も発見され難く、もし発見されても、手直しすることは至難のワザとなる。最初から、溶接順序を考えておくと共に、裏当金等を利用して、片側溶接が可能なところは、設計を変更すべきである。