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各船級協会も造船用鋼材及びその溶接部に対する切欠き靱性の要求は、ある温度におけるVノッチシャルピー衝撃値で規定している。第1.9図にA級鋼及びB級鋼の0℃における吸収エネルギー値を示す。溶接部の切欠き靱性は溶接入熱と密接な関係があり、一般的にボンド部付近の粗粒域は靱性が低く、微細部は焼ならし組織に似て靱性が良好である。

第1.10図はこれを定性的に示したものである。

鋼材の衝撃試験において、吸収エネルギーが急激に低下する温度を遷移温度といい、衝撃曲線で最高最低の平均値を与える温度をエネルギー遷移温度といい、せん断破面率が50%の温度を破面率遷移温度といい、それぞれvTrE、vTrs と表わす。(第1.11図)

 

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第1.10図 鋼の溶接部Vシャルピー衝撃値の分布例

 

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第1.11図 Vシャルピー衝撃試験の遷移曲線

 

1.2.3 使用鋼材の規定

船舶は他の陸上構造物に比べ、波労による荷重の変動、動揺、振動などの複雑な外力を受ける。さらに現在の船は昔の鋲接船と異なり溶接船であり、鋼材の材質が不適当であると重大な事故の原因となるので、良質な鋼材が要求される。

造船用韻材の規格が歴史的に大きな発展をとげたのは、リベット構造から溶接構造になり始めのころ、米国で建造された戦時標準船が瞬時に破壊した事故が多数発生したからである。

 

 

 

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