鋼船工作法
第1章 一般
1.1 建造を始めるに当って
1.1.1 建造の計画
(1) 事前の検討
実際の建造を始める前に、図面をもとにして机上作戦を行うことを“事前検討を行う”という。実際に始めてみると、いろいろな問題点が生じてきて、その場で考えこんだり、先の見通しが立たなくなったりすることは、船を建造する上では常に起こりがちのことである。これらの問題の多くの部分は、建造の始まる前に、図面を見てよく検討することにより発見されるものである。問題点が見付け出せれば、その対策を講ずることができる。すなわち、事前検討とは、図面をよく読んで頭の中にそれぞれの工程を描き出し、起こり得る問題点の対策を立てておくことである。具体的にはブロック分割を行い個々のブロックの組立順序を規定することである。これらの検討により、船の建造過程は、いつも明確に描き出されるようになり、問題点の予想もつき易く、工事担当責任者の意図通り建造を遂行できるようになる。
(2) 工程の順序(ステージ)
溶接作業が船体の工事に取入れられるようになってから、建造法はブロック建造法となった。ブロック建造法とは、加工から船台までの間に“組立”という工程が入ることである。各工程に対して、どれだけの仕事量を割当てるかを決定することが工期、予算に重大な影響を与える。特に、ブロック建造法の特色である組立ステージにどれだけの仕事量を割当てるか、組立ステージ内で、先行組立とブロック組立の比率の配分をどの位にするか、これらは各造船所の設備や人員構成によって決められる。