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V. まとめ

本開発事業の目的は、身体障害者が使い易く、しかもヨットの楽しさを十分に感じられるヨットを開発、建造することである。そのために、まずセールトリム装置の身体障害者対応設計として、筋力測定装置を新たに開発し、筋力測定によりウィンチサイズその他の最適化を行った。この種の測定は過去に例がなく、極めて有効な資料が得られた。

次に風洞モデルにより、身体障害者にも容易に操作できる高性能で安全なセールの開発を行った。この結果、多数の有力な知見が得られ、将来身体障害者にも一般のヨットレースで好成績をあげることが出来る道が拓かれたと考えられる。

又、椅子及びデッキ等の身体障害者用設備機器の開発を、身体障害者と共に試行錯誤を繰り返しながら行った。

 

FRP成形用型の開発に当たっては、型の製作工程の自動化を目指してコンピュータ原図システムから直接製作できるシステムを開発することを目指し、成型用型の予備調査を行った。当初有望と考えたセラミックス材は曲げ強度、表面処理の耐久性、ブロック接着等に問題があり、まだ開発の段階で完成した技術とはなっていないことが分かった。今後時間をかけて試行錯誤する必要があると考える。

そこで、実績のあるパラフィン製のマスターモデルをNC切削し、FRP製の成型用型を製作した。ヨット用の鏡面仕上がりとしてはやや問題があったが、ほぼ期待通りの仕上がりの物が得られた。

 

続いて、試作艇を建造した。通常のヨットと異なり身体障害者対応設計のため、艤装品の取付方法・配置に工夫が必要だった。そのために予想以上の工期を要したが、完成は予定に間に合った。

試作艇の性能試験は身体障害者関係装置の性能試験と帆走性能試験を行った。身体障害者関係装置については種々改良すべき点も新たに見つかったが、今後の具体的な課題が明らかになったという意味において、それも今回の試作艇建造の重要な成果と言える。

帆走性能試験については、船速と風上有効速度は設計予測値と良い一致を見せた。しかし、予算及び時間の制約で一部分しか行えず、風洞モデル試験結果を定量的に確認する所までは至らなかった。今後、帆走性能試験を繰り返すことによって試作艇の性能をさらに引き出すことが可能と考えられる。

 

今後残された課題に、本試作艇の重量・復原力試験及び艇体強度試験がある。CFRP製・軽量高強度の本試作艇のような高性能ヨットの基本特性として、是非確認する必要がある。

以上の点についてさらなる性能試験を繰り返すことにより、身体障害者関係装置の完成度を高め、使い易く、ヨットの楽しさを十分に感じられるヨットを完成させたい。

 

 

 

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