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7.2.3 「水平偏波成分を含むこと」への変更

円偏波SARTと水平偏波SARTの比較実験を行ってきたが、円偏波SARTは予測された3dBの受信電力の低下もほとんど観測されず、偏波が旋回していることが海面反射波の干渉による受信電力の極小化を抑える効果となって現れた。その結果、円偏波SARTは応答の安定性に優れている結果が得られた。また、海上実験でも、船舶からの観測および陸上に設置したレーダでの観測結果からも応答の安定性に優れていることが分かった。さらに陸上に設置したレーダでの計測結果からは、受信電力のパターンが約3mの海上高に設置した水平偏波と同等の受信電力が得られていることが分かった。これは円偏波の場合、海面での反射係数が水平偏波とは異なるため干渉状況が変わり、結果として遠方での受信電力が増大したことにある。この現象は船舶レーダでの観測でも現れた。水平偏波SARTでは11.5海里まで視認できたが、円偏波SARTでは14海里まで視認できたことは極めて重要な発見的事実である。この現象はさらに詳細な観測等を行い検証したい事項である。

これまで船舶用レーダは水平偏波を使用することが前提であったことから、SARTも水平偏波を使用することに定められていた。船舶用レーダには円偏波を使用できる機種もあり、円偏波の旋回方向が異なると著しく受信強度は低下する。円偏波の電波は金属面で反射されると偏波面の旋回方向が逆転する性質がある。円偏波がコーナレフレクタにあたると2回の反射で入射波と反射波が同じ旋回方向となるため、レーダのアンテナ面でサーキュライザ(円偏波と直線偏波に変換する装置)を通過する際に逆旋回となって大きく減衰する結果となる。このコーナレフレクタからの反射波には不都合な特性が、同様に旋回方向を変える性質を持っている雨滴からの反射波(レインクラッタ)を抑制する円偏波方式のレーダの利点となっている。円偏波を使用したレーダでも支障無く円偏波SARTの信号を受信できるように、偏波の旋回方向も検討し考慮しなければならない。

 

 

 

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