なお、A方式は机上検討のみにとどめ、試作及び浮遊実験は行わなかった。
(1) 実験方法
つぎの手順で、B方式のSART用浮体を膨脹させて海面に浮遊させ、その状況を目視観察し、妥当性を観察した。同時に実験状況をビデオ及びカメラで撮影したが、その状況は写真5.2-1〜5.2-3のとおりである。
1]水槽にSART浮体を投下して、膨脹状況を確認する。
水槽でSART浮体を浮遊させた状態で手動で動揺させて、復元状況等を観察する。
2]海上での浮遊状況を観察する。
(2) 実験結果
1] 浮体の膨張状況
SARTを投下してから24秒で膨脹して浮上した。
2] 水槽での浮遊状況
水槽中では浮体は直立し、手動で動揺させると、振幅は10数回で減衰し静止した。
固有周期は1.8秒であった。
3] 海上での浮遊状況
浮遊中におけるブイの動揺は横揺れが大きく、約40度傾くことがあった。
なお、実験時の気象は、風速2〜3m/s(気象台観測値)、波高0.2〜0.3mであった。
(3) 評価及び試作後の検討課題
1] 膨脹時間
試作した浮体では、投下してからフロートが膨脹するまで約24秒を要した。これはフロートを膨脹させるセンサー(湿感式)の、感湿部が、折り畳まれたフロートの内側にあったことから、海水の浸入が遅れたことにより、フロートの膨脹に時間を要した。
このままでは海上に投下すると、深く沈み過ぎ、水圧によりフロートが膨張せず、浮上できない可能性がある。そのため、フローとの畳み方を変更し、エア抜きの孔を大きくする改良を講じたことで、感湿部の水周りが良くなり問題は解消された。
2] 浮体の動揺等
浮体の固有周期が1.8秒で、港内の細かい波の周期と同調したため結果、アンテナの揺れが大きくなった。しかし、ビューフォート6相当の実海域では波の周期は6〜7秒であり、浮体の固有周期と周期帯が外れるため、浮遊実験時のような同調による大きなゆれはおこらない。