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発災対応型防災訓練

〜実戦的な防災訓練を目指して〜

 

東京消防庁 向島消防署

警防課 防災係 南部真奈美

 

1 はじめに

 

「発災対応型防災訓練」とは、住民が自宅や職場にいる時に災害(地震火災)が発生したと仮定して、それに臨機応変に対応することが求められる新しい型の防災訓練である。自宅や職場から一時集合場所へ向かう際に遭遇した訓練事象に、出会った順に対応する。よって、火災を発見したら、まず街頭設置や自宅の消火器を集めてくる。倒れている怪我人に出会ったら、三角巾で応急手当を行う。また、倒壊家屋に人が閉じ込められている場合であれば、救助資機材を使って救出する。この訓練は、従来のように公園に集合して、消防側があらかじめセッティングした消火訓練や応急救護訓練を受けるといった受動的なものではなく、住民が自分達で考えながら積極的に災害に対処するという能動的な訓練で、防災行動力を高めることを目的としている。

 

2 発災対応型防災訓練を考案したきっかけ

 

平成10年に東京都から発表された「地震に関する地域危険度測定調査結果」において、調査対象の5080町丁目の中で、ワースト1位・2位が管内にあり、かつ、ランク5という危険な地域であるという評価を9町丁目が受けてしまった。(別添え資料1参照)「ハード面で弱い地域をソフト面で強く!」をスローガンに実戦的な訓練の形を模索し、この発災対応型防災訓練を考案し実施した。

この訓練は、平成11年1月に第3回防災まちづくり大賞において消防庁長官賞を受賞し、また、火災予防審議会答申でも紹介される等、都民主体の新しい訓練として全国の防災関係者の注目を浴びている。

 

3 従前の防災訓練の問題点

 

これまでの学校や公園に集まって行われてきた防災訓練は、発災対応型防災訓練に対比して集合型訓練と呼ばれている。この集合型訓練では、消防署が持ち込んだオイルパンや訓練用消火器を使い、住民はあらかじめ準備されたセットの前で、お客さんのような存在になってしまう受け身の訓練であった。積極的に住民主体で行っているところは少なく、内容もマンネリ化していた。

 

 

 

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