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上昇とともに気泡の膨張が続くと、体積の大半は気泡でしめられ、ついには骨格をなすマグマが破壊されてしまう(図2)。これが爆発的な噴火で、マグマは大小の破片となって火口から噴出する。しかし、破砕を起こす前に気泡がマグマから多量に抜け出すと、マグマは液体のまま溶岩として地表に流れ出す。溶岩の流出から破砕を伴う爆発まで、多様な噴火は気体成分の存在によって引き起こされる。

爆発的な噴火で生じる雲状の流体は、マグマの破片と空気の混合物である。空気は噴出後に外部からも取りこまれる。この流体が噴煙として上昇するか、火砕流として流下するかは、浮力の有無で決まる。マグマの熱で空気が暖められると、熱膨張によって流体は軽くなる。この効果で上昇を続けるのが噴煙である。一方で、マグマを含むために流体は重くなるので、それが熱膨張よりも勝る場合には、雲は上昇できず、火砕流となる。火砕流は高温を保って時速100kmもの速度で流れ下るので、襲われたら逃げる暇がない。

 

噴火予知の方法

噴火の発生を事前に予知するにはどうしたらよいだろうか。先ず、噴火は似たような間隔で繰り返されることがある。この間隔はマグマの蓄積に必要な期間と理解され、次の噴火の時期を知る目安となる。例えば、三宅島の噴火は約20年、有珠山の噴火は約30年の間隔で繰り返されてきた。今年このふたつの火山で噴火が起きたが、それらは前の噴火から17年と23年経っていた。

噴火が近づくと、その兆候が色々な観測データに捉えられる(表2)。このような前兆現象を用いて、噴火の発生を事前に予測できた例は少なくない。最もよく使われる観測データは、火山やその周辺で発生する火山性地震である。マグマだまりの圧力が高まったり、マグマが移動したりすると、周囲の岩石に力が加わり、歪みが生ずる。また、マグマや熱水から水蒸気などが放出され、断層をすべり易くする。これらの原因で誘発される地殻の破壊が火山性地震で、火山の活動の高まりと対応して、しばしば群発する。

マグマの活動のために生ずる歪みは、地殻変動の観測で直接計測できる。山腹で傾斜のわずかな変化を追跡すると、マグマの蓄積や移動に対応する山体の膨張や収縮が捉えられる。山体の歪みは観測点の位置を動かすので、その微小な変化をGPSによって測ることもできる。GPSは人工衛星を基準にした位置決めの技術である。日常生活でもカーナビなどに利用されているが、火山観測ではずっと精度の高い計器が使われる。

噴火の前兆現象には様々なものが知られており、それらは噴火予知の重要な手がかりになってきた。しかし、観測された異常が前兆現象かどうかを事前に判断することは易しくない。前兆現象を集めるだけでは、噴火の時期や性質はもとより、噴火が本当に起こるのかどうかもはっきりしないことが多い。信頼性の高い噴火予知は、観測データを総合して、マグマの動向など、地下の状態が的確に把握できたときに可能になる。

 

 

 

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