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前頁は平成11年度に作成した一般向け普及啓発パネル(5枚セット)である。パネル作成の背景となった3年間の事業で得た知見や情報、提言をまとめてみた。

 

海だけじゃ、できない…みんな、つながっている

 

都市部を中心に全国15ヶ所でシンポジウムと体験学習行事を開催したが、どこでも海の環境は悪化しており、魚介類も減ったと言われる。しかし、海だけでは海の問題は解決できない。

水質は、工業排水が汚染の主な原因だった高度経済成長期の頃と比較すればよくなったが、今や水質汚濁の主な原因は生活排水となり、誰もが海を汚す加害者となっている。都市部を抱える閉鎖性海域、東京湾、伊勢湾、大阪湾などは、富栄養化により発生する赤潮や青潮の被害を受けているが、一方では森林が減り、ダム等が川の流れを阻み、海に鉄分やミネラルなどの栄養分が行かなくなり、海藻や海草による海の森も減少し、海の生物にとって生息環境は悪化するばかりだ。また、どこでも水質はよくなったが、海底には汚れがたまっていたり、埋立のために土砂をえぐられた海底の穴が青潮の原因となったり、海底は問題を抱えている。

平成11年の夏は特に台風による大雨の被害が大きく、山が崩れて林業にも大きな被害が出たが、流木が海まで到達したり、河川の散乱ごみも海に押し出され、漁業被害が大きかったそうだ。ポイ捨てによる散乱ごみも国内だけではなく世界を漂流するなど、問題だが、ルールを守って出しているごみも、海を埋め立てて処分していたり、ごみ焼却場からダイオキシンなどの有害物質となって海を汚し、海の生態系を乱していることもある。

海岸や浅瀬の埋め立てや、船からの油流出など、海で解決できる問題もあるが、海の環境問題の原因の大半は陸域の人間活動にある。海を生業の場とする漁業者などは日々それを体感しているが、陸域で主に暮らしている者にはなかなか実感できない。すべては海につながり、やがて地球全体につながるのに。

だから、たまには海から考えて、日常生活を見直し、自分にできることを考え、実行してほしい。

 

流域(海・川・森のつながり)で考えよう

 

海岸や河川でのごみ拾い、川や池などのエコアップ、市民参加の森づくり…海や川や森で色々な環境保全活動が行われているが、海・川・森のつながりを考えた活動はまだまだこれからだ。1ヶ所だけよくなっても、みんな水でつながっている。「森は海の恋人、川は楽しいデートコース」「森と川と海はひとつ」なのである。

仙台・富山・浜田シンポジウムで紹介された川上・川下交流では、多くの発見があり、自分の行動がどこへどうつながるのか具体的に体で分かり、活動により広がりが出ていると感じた。

 

ネットワークを組んで、一緒にやろう

 

川や森で活動するグループのネットワークはかなりできてきたが、海で活動する人たちのネットワークはまだあまりできていないそうだ。また、海・川・森を横断する形のネットワークも、市民・行政・産業・専門家のネットワークもまだまだだ。縦割り行政の弊害はよく言われるが、海の環境をよくするには、人もつながる必要がある。北海道では農・林・漁業、市民・専門家・行政が一緒になった森づくりが功を奏し始めた。

横浜の野島周辺では、海・川・森、市民・行政・産業・専門家のネットワークができていて、流域全体で一緒になって環境をよくしようと色々なことにチャレンジしていた。そういう動きがもっと広がることを願う。

 

 

 

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