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もちろん、15年先まで現在の政権が続くかという点に関しては諸説がありますが、これは岡崎大使が明言されていますように、ほかのシナリオというものは、日本や太平洋諸国にとってあまり脅威にならないシナリオです。例えばハードライナーが台頭するという可能性があるかもしれません。でも、そうしますと中国は世界から孤立する方向に進みますから、経済発展がなかなか難しくなりますし、高度技術兵器の入手も難しくなるでしょう。ですから、現状維持というシナリオが一番怖いことになります。その一番怖いシナリオだけを考えておけばいいというのが岡崎大使の主論で、私もそれをまさにそのまま受け入れさせていただきます。ですから、一応日本は、15年先には、このままでいくと中国の軍事力がかなりに脅威になるぞと考えた上で中国とつき合っていったほうがよろしいかと思います。

そこでどう関与するかということは、皆さんいろいろご意見があると思います。例えばインドとの関係を密にする方法によって戦略的なカウンター・バランスをとるとかですが、時間がないので、そこまでは立ち入りません。

山田寛(議長) じゃあ、岡崎さん。

岡崎久彦 私の意見を支持していただきましてどうもありがとうございます。私は、もっと一言ですけど、短期的に―中国が覇権国かどうかというのは歴史的・長期的な話ですけれども、田中さんのワード・ポリティクスといえば、中国はまさに今、覇権国なんです。どうしてかといいますと、日本と中国は友好関係を持たなきゃいけないが、その友好の定義というのを一手に握っているんですね。これが一番の問題なんです。中国に友好的な日本人というのはたくさんいるのでありまして、人によってはほんとうに良心的に、もう一生を捧げて中国に技術移転しようと教えている人がいます。これは誠心誠意の人がいます。ところが、これが、定義上、友好人種じゃないんですね。その人が「台湾は独立したほうがいい」と一言言ったら、非友好人種になる。これは非常に人為的な政治的な定義でありまして、そんなものに振り回されていたら、ほんとうの友好関係というのはできないんです。ですから、そういう政治的な定義は排除するというか、無視すると言っちゃ悪いんですけれども、それをおっしゃるのはあなたの勝手だと。我々がほんとうに希求しているのは真の友好関係だと、そういう態度に徹したほうがいいような気がします。

 

 

 

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