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それじゃあ、井尻さん。エッセイストの井尻さん。

井尻千男 井尻でございます。今、拓殖大学におります。

実は、この日本というのは、地球儀を見ている限り、海に囲まれた海洋国家のように思いがちであります。それはそれでロマンチックなイメージなんですが、私は海洋国家と大陸国家ということを仮に言うとしたら、それは面積がただ広いか狭いかではない、不毛の砂漠だったら人は住んでいないんですから意味がない。つまり人口というものがどのくらいのスケールなのかということを議論しないといけない。1億というスケールはものすごい、しかも密度も含めてすごいことなんです。そうしますと、日本は前提としまして大陸国家的な統治を議論しないとだめだということを感じるんです。つまり、1億の人間を統治して豊かさと秩序を永続させるかというのは、たいへんな統治の知恵を必要とする、まずその議論をしなきゃいけない。

しかし、海洋国家だとか通商国家と言ったときに、すぐ人口規模の小さな都市国家ないしは中継貿易小国家というものをイメージしてしまう。これは自由、自由と言えばいいんです。ただ自由の旗を掲げていれば、およそ貿易の拡大になると、こういう議論になるんで、きょうの議論も聞いていますと、後半に世界秩序、地域秩序ということがありますので、そちらで秩序論はするのかもしれませんが、現段階で聞いておりますと、海洋国家、自由貿易と、こういう文脈に入り過ぎているだろうと。日本の場合は1億ですから、否応もなく内陸の統治ということを重視しなければならない。つまり、シンガポールのような都市国家をモデルにしてはならないということです。

もし、ただ貿易ということだけでしたら、日本は十分に海洋国家になっておるではないかと。問題は、それじゃあ、そういう交易の拡大と、世界の秩序や地域の秩序というものに対して、どういうビジョンと実力を持つかという、この議論をあわせて、ぜひ意見を伺いたいと、そんなふうに思います。

伊藤憲一(議長) 地域秩序、世界秩序のかかわりというのは、実は今年の議論の非常に重視したところでございまして、午後のセッションで主要テーマになりますので、よろしくお願いいたします。

それじゃあ、畑さんがさっきから発言ご希望ですので、畑さん。

畑恵 すみません、本当は東祥三先生がご発言のときに一言申し上げたかったのですが。

 

 

 

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