7. ケーススタディのまとめ
(1) バリアフリー化の実態
ケーススタディを行った5航路におけるバリアフリー化の実態を要約すると以下のようになる。
1] ターミナル内のバリアフリー化
近年建設された長崎港や奈良尾港のターミナルは、バリアフリー化の対応が行われているが、長崎港では情報提供(施設配置の分かりやすさ等)において、やや難点が見られる。
一方、比較的年数を経たターミナルは、当初整備段階では基本的にバリアフリー化未対応であったが、一部では身障者用トイレの設置や出入口の段差解消・自動ドア化といった改良が実施されている。ただし、視覚・音声・点字等の情報提供設備の設置や発券カウンター・記入台の車いす利用への対応等は実施されていない場合が多い。
また、小型旅客船の寄港地では、待合所しかない港や待合所すらない港も多い。
2] 乗下船時のバリアフリー化
乗降施設については、ボーディングブリッジの使用例はなく、いずれの港湾においてもタラップによって乗降している(小型旅客船の寄港する一部の港湾では直接乗降)が、その段差解消の対応は行われていない。また、舷門もしくは客室出入口のコーミング段差の解消も、いずれも未対応であり、今回対象とした航路においては、乗下船時のバリアフリー化は基本的にいずれも未対応である(平水区域の遊覧船を除く)。
ターミナルビルと乗船口の間の移動経路についても、一部の港湾では雨よけが設置されているものの、雨ざらしの港湾が多い。
3] 船内のバリアフリー化
各船舶とも、船内の移動経路における段差解消も行われていないケースが多く、特に小型旅客船は通路も狭隘で高齢者・身障者等の移動には制約が大きい。
また、フェリーの2事例では、乗船口や車両甲板と客室が異なる甲板にあるため、客室までの経路において垂直移動が必要となるが、昇降設備は設置されていない。
客席についても、高齢者・身障者等の利用に適した客席や車いすスペースは、いずれの船舶においても設置されていない。
身障者用トイレの設置、視覚・音声・点字等の情報提供設備の設置等も、ほとんど実施されていない。
4] 港湾までのアクセスのバリアフリー化
主要な港湾には路線バスが乗り入れているが、ノンステップバス等のバリアフリー化はいずれも未対応である。低床バスはすでに導入されたり、今後導入計画のある事業者もあるが、離島港湾では、需要の少なさや道路の整備状況の問題から、導入が後回しになる可能性がある。