日本財団 図書館


6. 日本が誇れる港湾環境技術の特徴

(1) 自然環境の保全、創造の考え方

沿岸域における港湾・海岸の整備や埋立地の造成に関しては、その規模や形状に関する環境配慮を行うとともに、健全な水循環の確保の観点からも、干潟、藻場、サンゴ礁のような貴重な自然の保全や修復、あるいは創出を求める社会的要請が強くなってきている。こうした背景から、沿岸域における開発事業と干潟、藻場、サンゴ礁との関わりには、以下のことが考えられる。

1) 既存の干潟、藻場、サンゴ礁への影響の軽減

2) 開発事業で失われた干潟、藻場、サンゴ礁の回復のための新たな干潟、藻場、サンゴ礁の創出

3) 沿岸域の環境の改善や潤いの向上のための沿岸環境インフラとしての干潟、藻場、サンゴ礁の創出

4) 既存干潟等が劣化しており重要度が低下している場合には手を入れての機能回復

5) 工事による発生土砂の有効利用としての干潟造成 等

 

これまで、日本の港湾においては、港湾の技術の中で軟弱な沿岸底質を扱い、波浪や流れを制御し、また砂浜を造成してきた経験から、干潟の保全や修復あるいは創出に関連する知見が蓄積されてきている。さらに、底質の改善などの経験を通じ、生物生息場の環境特性などの情報が蓄積されている。

また、港湾施設が本来の機能に加えて、海藻草類、サンゴの生息場、魚介類の産卵場、生育場・摂餌場としての機能をもっていることが理解されている。特に、これまで港湾整備を進めるなかで波浪や流れを制御し、その海域の利用目的に応じた物理的環境を作り出してきた経験や、さらに研究を通じて、港湾構造物に着生する海藻類、サンゴの知見、港湾空間における環境情報が蓄積されている。

したがって、沿岸域における干潟、藻場、サンゴ礁の保全・創造においては、港湾の開発、管理においてこれまで蓄積されてきた知見や環境情報を積極的に活用していくことが重要であり、有効と考えられる。

 

(2) 自然環境の保全・創造手法

干潟・藻場、サンゴ礁の保全・創造手法の基本手順は図6-1のように整理される。

保全、創出にあたっては、まず干潟、藻場、サンゴ礁の成立のための主な条件を考慮して、保全、創造の対象地点を選定することが重要である。また、保全・創造のための整備方針、基本計画の設定にあたっては、対象となる地点の地形、海象、水質、底質、生物相などの現況を把握し、それを基に、その場にふさわしい生態系や地形が形成されるよう、よく検討する。さらに、設計、施工においては、自然の生態系のもつ構造、機能、多様性をまね、生態系が自己を形成する時間を考慮し、手をかけすぎないようにすることが重要である。施工後においては、適正なモニタリングを行い、その成果をフィードバックして良好な環境の維持に努めることが重要である。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION