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(2) サンゴ礁の分布と種の多様性

図2-3-2に示したように、生物地理学的にみて地球上には4つの主なサンゴの生息域がある。それは、インド洋-太平洋地域(IWP)、東太平洋地域(EP)、西大西洋地域(WA)、東大西洋地域(EA)である。

これらの地域は種組成や多様性においてかなり異なっており、例えば、インド-太平洋地域と西大西洋地域に共通する石サンゴの種は1種類にすぎない。インド-太平洋地域は他の地域よりもはるかに高い多様性を有している。西大西洋地域は二番目に高いリーフ群集の種多様性を有しているものの、インド-太平洋地域と比較するとほぼ1/10である。魚類の多様性もインド-太平洋地域の方が4-6倍高い。

また、東大西洋地域のサンゴ群集は、リーフを形成しておらず、他の地域と比較して多様性は低い。

このような種の多様性に見られる差異はその海域の地質学的な年齢に関連すると考えられている。例えば、大西洋のサンゴ礁が形成され始めたのは1万年から1万5千年前であり、グレートバリアリーフは約200万年前に形成された。太平洋には約6000万年前に形成された環礁も存在する。

 

(3) サンゴ礁のタイプ

サンゴ礁には表-1に示す4つの主なタイプがある。fringing reefs(裾礁)、barrier reefs(堡礁)、atolls(堡礁)、platform reefsである。

裾礁、堡礁、環礁形成過程に関するダーウィンの沈降説を図2-3-4に示す。サンゴ礁の形成はサンゴの幼生が陸縁の水面下の海底に着生して始まる。サンゴは成長して大きくなると沿岸に沿って島を囲むようになり裾礁が形成される。裾礁のできた島がゆっくり沈降すると、サンゴは上方に向かって成長を続け堡礁が形成される。中央の島が海面下に沈降すると環礁となる。

日本のサンゴ礁の多くは裾礁である。

裾礁は陸域とサンゴの生息地が近いことから図2-3-5に示すようにマングローブ林や海草場や海洋などの他のシステムと関係している場合が多い。マングローブ林や海草場は放出される淡水を防ぎ、有機物や無機物や汚染物質を貯めて、環境清澄にして栄養塩の乏しい水にすることでサンゴ礁の成長を沖側へ誘導する。一方、サンゴ礁は潮流や波浪に対する物理的な緩衝作用によって、地質学的な時間の中でマングローブ林や海草場に適した環境を形成している。

 

 

 

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