2. 藻場、干潟、サンゴ礁の世界における分布と利用状況
2-1 藻場
2-1-1 海藻
1) 世界各地における海藻の生育環境(徳田、大野、小河 1987)
(1) 光
海中に入射する光の質および量は、海域の緯度、海水の透明度、季節、天候、時刻などにより異なることが知られている。太陽光は、大気を通過する際にも吸収・散乱され、海面でも一部の太陽光は反射され、海中に透過した光は懸濁物やプランクトン等の粒子により散乱され、海水に吸収される。このため、波長の長い光ほど海水によって吸収されやすく、赤色光では海面下数mで失われしまう。最も深くまで透過するのは青色光である。
このため、海中に透過する光量は海域により異なり、水面上における太陽光量が深度とともに減衰し、1%程度になった深度が、植物プランクトン光合成の補償深度にほぼ相当する。その深度は、西アフリカ沖(20m)、アイスランド東部(32m)、ジブラルタル海峡(41m)、ジブラルタル東部(53m)、サルジニア島東部(75m)、サルガッソ海(80m以上)である。
しかし、北海のヘルゴランド島付近における海藻の垂直分布を調査した結果では、その下限はわずか15mであり、そこでの光量は、入射光量の0.05%(6.OE/m2/year)〜0.1%(12.0E/m2/year)しかなかったことから、海藻の補償点は、植物プランクトンについて一般に考えられていたよりもさらに低いようである。
地表に到達する太陽光のうち、植物の光合成に有効とされている400〜700nmの光線(光合成有効放射:Photosynthetically active radiance)は、わずか45%を占めるにすぎない。
光合成による酸素の生産量と、呼吸による酸素の消費が等しくなる深度を光合成の補償深度、その光量を補償点といい、この補償点以下の光量のところでは海藻は生育できない。
補償点とは逆に、光量の増加と光合成速度が一定になる光合成飽和光量を求めた結果は、表2-1-1に示すとおりである。潮間帯種では500μE/m2/s、亜潮間帯種で200μE/m2/s、深海種で100μE/m2/sがほぼ光飽和点であり、生育水深による光飽和点は明らかに異なっている。