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2] 動物と地名

・哺乳類:動物に由来する地名で多いのはキツネやタヌキである。所沢市には狭山丘陵の懐に位置する山口や上山口地区に「狢入(ムジナイリ)」、「狐峯(キツネミネ)」等の地名がみられる。狢はふつうタヌキの別称である。また、東大和市の旧蔵敷村には「鼠沢(ネズミザワ)」とよばれる池があったとされ、地名としてのこっている。

・その他:所沢市上山口に「雑魚谷(ザコダニ)」あるいは「雑魚入」とあるのは、文字どおり雑魚がたくさん生息していたか獲れた場所のことであろう。また同市三ヶ島堀之内の「蛇崩(ジャクズレ)」は崩壊しやすい地形で蛇が多い場所との伝承があるが、本来は「ビャクズレ」ではないかとの考え方もある。蛇といえば、狭山丘陵の南側を流れる残堀川はもと「蛇堀川」とよばれ、蛇にまつわる伝承がのこされている。

3] 自然現象と地名

風に関する地名として所沢市三ヶ島堀之内に「吹張(フッパリ)」がある。ここは谷戸の一部が小さな支谷を形成している場所で、聞きとり調査によれば風が吹き込みやすい地形であることに由来するという。

ところで、瑞穂町や所沢市には「ズウズウ」、「トウトウフチ」、「ドウドウメキ」、「トウノノメキ」等という興味深い地名がある。これらはいずれも「どどめき」や「どうめき(百目木)」のことで、水が勢いよく流れ落ちるところ、小さな滝、川や水音が高くトドロクところの地名とされている(山中襄太『地名語源辞典』、1968)。狭山丘陵には幾筋もの湧水流があり、地名がのこされている場所も川や水路の近くである。

なお、類似の事例として瑞穂町に「ザクザクババア川」というのがある。由来は日本各地に伝承された「小豆とぎ」や「小豆洗い」とよばれる伝説に基づくと考えられているが、これも本来は水の音から生まれたものであろう。前出の地名と異なる点は、音の正体が動物にまつわる伝承へと転化していることである。

※地名の出典は以下の文献による

・瑞穂町史編さん委員会. 1974. 瑞穂町史. 瑞穂町.

・瑞穂町教育委員会. 1980. 瑞穂の地名. 瑞穂町教育委員会.

・所沢市教育委員会. 1980. 所沢市史(地誌). 所沢市.

・武蔵村山市教育委員会. 1990. 武蔵村山の昔がたり(村山ことばによる口頭伝承)

・東大和市史編さん委員会. 1999. 道と地名と人のくらし. 東大和市.

 

 

 

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