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2.4 プロペラ材料

プロペラに用いられる材料には高力黄銅鋳物、アルミニウム青銅鋳物、ステンレス鋳鋼などがある。一般に高力黄銅鋳物とアルミニウム青銅鋳物が使用される。

高力黄銅鋳物(JIS記号CAC301、旧記号HBsCl)の化学成分は銅(Cu)が55〜60%と亜鉛(Zn)が33〜42%を主体としてそれにマンガン(Mn)、鉄(Fe)、錫(Sn)、アルミニウム(Al)などの多くの元素を加えた合金である。機械的性質は船舶機関規則などにより、引張強さ430N/mm2(44kg/mm2)以上、伸び20%以上と定められている。材料の比重は約8.3である。

アルミニウム青銅鋳物(JIS記号CAC703、旧記号AlBC3)の化学成分は銅が78〜85%とアルミニウムが8.5〜10.5%を主体にしてそれにマンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni))などを添加した銅合金である。機械的性質は引張強さ590N/mm2(60kg/mm2)以上、伸び15%以上である。材料の比重は約7.6である。

船の航路、船種などにより高力黄銅鋳物が使用されることがあるが、最近ではほとんどのプロペラにアルミニウム青銅鋳物が使用されている。

 

2.5 プロペラに発生する現象

1) プロペラキャビテーション現象

プロペラキャビテーションはプロペラの回転数がある範囲を越えるとプロペラ羽根によって、水が加速され、水との相対速度の関係で羽根表面にある限界の圧力より低い部分が発生すると気泡が生ずる。この現象をキャビテーション現象あるいは単にキャビテーションと呼ぶ。日本語で空洞現象と呼ぶこともある。

キャビテーションが発生した状態でプロペラを回転させると、羽根表面に壊食(エロージョン)が発生し、初期の間は、わずかに羽根表面に凹凸が見られるだけであるが次第に表面に無数の小さな穴ができ、アバタ状になる。そしてついには羽根に穴が貫通したり、羽根先端がぼろぼろになったりまた羽根後縁側が曲ったりすることがある。

プロペラキャビテーションによって、プロペラ効率が低下したり、振動や騒音が発生することがある。このキャビテーションは物理的な現象である。

2) プロペラ腐食

プロペラは海水中では耐食性が良好な材料であるが、極度に汚染された海域または船体防食が不十分な場合、プロペラ材料は合金であるので、異った性質を持つ金属粒子間で一種の電気的作用が発生する。高力黄銅(マンガン黄銅)鋳物製プロペラの場合、亜鉛を約40%含んでいるので、亜鉛分が海水にとけ出しプロペラ表面が黒色または黒褐色に変色して、肌荒を生ずることがある。これは脱亜鉛現象と呼ばれるもので、化学的な現象の腐食(コロージョン)である。

3) プロペラ空気吸込み現象

プロペラの中心から水面までの距離が浅い場合、プロペラが回転した時、水面から空気を吸い込み、船速が急激に低下したり、プロペラ回転数が急激に上昇したりして、プロペラの効率が低下する現象である。

 

 

 

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