2・95図(b)のような噴射時期測定用具をデリベリホルダに取付けて測定すると燃料の出始めが比較的正確にわかる。この出始めの時期は燃料噴射ポンプの作動時期で燃料噴射弁から噴射するいわゆる噴射時期ではないが、噴射時期とほぼ同じなので燃料噴射ポンプの作動時期をもって噴射時期と考えてよい。
2) 燃料噴射弁
(1) 機能と構造
ディーゼルエンジンの原理は、圧縮された赤熱空気の中に燃料を細かい霧状にして噴射し、着火燃焼した熱ガスをピストンに作用させこの力を動力源として取り出すものであるが、燃料を噴射する方法に空気噴射式と無気噴射式とがあり、現在のエンジンはほとんど無気噴射式となっている。空気噴射というのは燃料と圧縮空気を同時に噴射する方式であり、燃料の微細化が得られる特長がある。無気噴射は燃料のみを噴射する方式であり空気噴射に比較して構造が簡単である。2・96図に燃料弁の構造を示す。
制約された場所で良好な燃焼を得るためには種々の条件が必要で、燃料の噴射状態によっても燃焼の良否が大きく左右されるので、当然燃料噴射には次の4条件が必要である。
1]霧化、2]貫通力、3]分散、4]分布
これらの一つひとつにはさらに種々条件が伴い、複雑な問題となるが今ここでは簡単に説明する。
1] 霧化:霧化は燃料を細かい霧状にすることで燃料の全受熱面積を増大し、着火および燃焼を良好にすることを目的とする。そのため燃料に圧力を加えて細かい噴孔から噴出させる。圧力を高くすると、より細かい霧となり、圧力が低いと霧化が悪く、遂には棒状となって噴出し燃焼困難となる。