2 周辺観光地・観光施設などとの連携や役割分担の考え方
観光客にとっては、旅には一定のテーマ性があることが、望ましく、楽しいものである。何がみたい、何がしたいといった動機があって、それとの関連性から旅は計画される。そうした意味では、美濃焼を核にした産業観光という取組は、優れてテーマ性のある旅を提供できるものである。
一方で観光客は、変化の乏しい旅を嫌う。一定のテーマ性をもちながらも、いわば口直し的なメリハリのある旅を好むのである。そこで観光を考えるうえでは、いかに多種多様な魅力を観光客に提示し、メリハリを付けられるかが、観光客への訴求力すなわち入り込み数に直結することを、念頭に置いておく必要がある。しかし、一つの地域だけで多種多様な魅力を提示していくことには、おのずと限界がある。それゆえに、周辺観光地・観光施設と連携し、相互に足らざる部分を補完し、役割分担し合うという戦略が必要になるのでる。
例えば、下呂温泉は、温泉しかない宿泊地なので、陶磁器を核とした産業観光を振興していく土岐市とは、相互に補完しあえる。また、阿房トンネルの開通で、松本方面から飛騨高山へという観光ルートができてきているので、さらに飛騨高山から下呂温泉、そして東濃へというルートを確立して、回遊性を高めていくことも可能なはずである。
東海地方では、生産の現場を活かしこれをみせていくという産業観光振興への取組が、名古屋商工会議所などが中心になって、既に進められており、JR名古屋駅などには、地域内の産業観光施設を紹介したポスターが多数掲示されている。また、愛知県では、産業観光のモデルコースが複数設定されており、県庁のホームページなどでも紹介されている。このポスターやモデルコースには、かがみがはら航空宇宙博物館など、岐阜県内の産業観光施設も一部含まれており、ここにも、県域を越えて連携していくことで、産業観光というテーマの一貫性とそのなかでの多様な魅力を確保していくという戦略を、みて取ることができる。
こうした先進的な取組のなかに、土岐市の産業観光も参入していくことで、相互補完して魅力を向上させ、また観光地としての知名度を上げていくことが肝要であろう。なお、知名度の向上という点では、本市が、東海地方の陶磁器産地の5市町(多治見市、笠原町、瀬戸市・常滑市・四日市市)とともに形成している「やきもの産地交流・連携推進協議会」の事業としても、連携協力して広報活動を行っていくことが必要であろう。
また、岐阜県においても、平成11年度から平成15年度までの5ヵ年を計画期間とする「県政の指針」において、「産業観光・国際観光・広域観光などの推進」を48挙げている重点事業のうちの一つとしており、「産業観光6つのポイント(体験工房、レストラン、展示施設、即売施設、街並み、象徴づくり)」の整備や「産業観光テーマルートづくり」、「広域観光交流」の推進などが、この間に行われることになっている。今後は、岐阜県とも連携し、県の事業も活用しつつ、魅力あるルートづくりを進めていくことが必要である。例えば、以下のようなルートが考えられるのではないだろうか。