はじめに
1 本調査研究の趣旨
平成12年4月1日に「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」(地方分権一括法)が施行され、これにより、今後、地域における行政を自主的かつ総合的に担うべき地方公共団体の役割はますます大きくなるものと見込まれる。
一方、我が国においては、急激な情報化社会の進展、少子・高齢化の進行、国民の価値観や生活様式の多様化等、様々な分野で構造的な変化が進行し、行政需要が増大・複雑化してきており、地方公共団体が単独で対応することは、財政的にも、能力的にも、困難を増しつつある。
こうした状況に加え、住民の社会参加意識の高揚、従来の地域コミュニティの崩壊等様々な要因が相俟って、近年、地方公共団体とNPOとの連携による高齢者介護やまちづくり等、従来の公と民の枠にとらわれない地域社会独自の取組みが数多く見られるようになっている。
また、従来の行政と民間事業の枠を超えて新たな行政手法を開発しようとする試みも見られる。
しかしながら、こうした変化は緒についたばかりであり、十分な分析がなされているとは言えない。本調査研究は、このような動きを踏まえ、分権時代の公民協働型地域づくりを支える地方行財政システムの在り方について考察を行うものである。
2 本報告書の構成
本報告書では、まず、第1章において、公民協働型地域づくりにおいて民の側で重要な役割を果たすことを期待されているNPOの現状と意義について述べる。
次いで、第2章では、NPO等の民間団体と地方公共団体との協働の現状、意義、問題点等について、まず全体像を、ついで個別分野毎に分析する。
第3章では、視点を変え、急速な情報化が、民間の経営手法の地方自治体への導入のために活用されていることから、その状況を分析することとする。
第4章では、今日、公営企業として事業が行われている分野における公民の役割分担について検討を行う。
最後に、公民協働を進めるに当たっては、地方公共団体の財政状況を踏まえ、その健全性の維持を図らなければならない。第5章では、発生主義の導入等新たな財政分析手法について考察を行うこととする。