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(3) 民間による住宅供給のための規制・誘導

民間主体による住宅供給を促進するための施策としては、都市計画的な規制的手法と誘導的手法が挙げられる。規制的手法は街並み誘導型地区計画や中高層階住居専用地区、住宅付置義務の設定を行う手法等があり、誘導的手法としては市街地住宅総合設計(いわゆる市住総)や都心居住型総合設計といった個別の住宅供給にあたり容積率の緩和を行う手法がみられる。このほか、家主に対し契約家賃と支払家賃との差額を国・地方団体が負担する特定優良賃貸住宅供給制度(いわゆる特優賃)も、地価の比較的高い地域における民間主体の住宅建設を促進するとの観点から、誘導的手法のひとつと言えよう。

これらの手法は一般に財政負担が軽い(あるいは無い)との観点からは地域住民の総論的なコンセンサスは得られやすいが、地権者等の利害に直接関係してくることから、ミクロなレベルでの住民の合意形成を行う必要がある。また、既にこれらの施策を行った地方公共団体における実情は、小泉氏の研究にもみられるように、必ずしもハコとしての住宅供給の増加に貢献しておらず、もとより住民の増加につながっているとは言い難い例(付置義務に対する「飛ばし」等。)もみられ、より一層の工夫が必要といえる。特に、他の施策も含め複数の施策を組み合わせ、よりインセンティブの強い総合的な施策パッケージ(例えば市場原理の導入としての容積率の売買等)を構築するべき、地域地区を一律に指定するのでなく、地域のデザインを見据えた上で限定的に行うべきといった意見が多く見られる。

また、施策によっては、例えば中高層階住居専用地区の設定による住宅供給の増加は、比較的高所得の新規転入者の増加をもらたすが、既存住民、特に中小自営業者や高齢者等に対する有効な施策ではなく、地域コミュニティの維持という観点からは意味が薄いなど、施策の個々の効果・有効性を十分に吟味した上で実施することが重要である。このような、都市計画制度を明確なまちづくりの方針のもとに組み合わせて都心居住を誘導していくべきであろう。

 

(4) 居住者への支援

居住者への支援として最も代表的なものは家賃補助制度であるが、家賃補助の対象によりその政策目的は大きく異なるといえる。全国の事例を概観すると、1]新婚世帯への補助 2]ファミリー世帯への補助 3]高齢者世帯への補助の3つに大別される。これらの政策目的としては、a. 新規転入または定住のための人口確保施策 b. 既存住民に対しより快適な生活を提供するための社会政策的施策(ひいては定住確保につながる面もある) c. 高齢者の安全快適な生活を保障するための福祉政策的施策があげられ、aとして1]の新婚世帯補助、bとして2]のファミリー世帯への補助、cとして3]の高齢者世帯への補助がもっぱら行われている傾向にある。

 

 

 

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