シナリオは、様々なレベルの特異性において存在するのかもしれない。シナリオは、漠然とした理念や志向の一揃いに比べれば、多少はましなものかもしれない。あるいは、具体的な行動、時間的尺度、それに目標を備えた戦略的計画に発展させうるものかもしれない。シナリオは、3つの基本要素のうち1つか、それ以上が欠けている可能性があるという意味において、つねに完全とは限らない。たとえば、あるのはオメガ一つ―好ましい将来図―のみで、α、つまり軌跡の明瞭な詳細は皆無だという場合、われわれはそれをユートピアという。別の言い方をするなら、現状(α)とある方向へ移行(軌跡)したいという欲求はあるが、目指すべき最終状態の、詳細に描かれた青写真が皆無なのだ。これは、いわば潮流に乗って漂っているようなもので、マネジメント改革の世界にはその証拠がたくさんある(「だれもがそういうことをしているように見えるからこそ、われわれもまた、同じことを試みる方が良いのである」)。
あらかじめ言っておくが、われわれは、明確に分析され詳述された三つの要素を備えた、完全に仕上げられたシナリオは、パブリック・マネジメントの改革の原則というより、むしろまちがいなく例外だと考えている。現実の世界はふつう、もっと雑然としていて、その将来図は細部はろくに明確にされてないし、現状分析は不適切だし、行政手段のさまざまな側面の軌跡は部分的だし、時に矛盾していたり、揺れ動いていたりするものなのだ。
4.3 改革の主たる構成要素
表4.1は改革の軌跡の主たる要素のうち、いくつかを例示したもので、以下の節、および項では、これらの小見出しを基準型(テンプレート)として用いる。
われわれは改革の主たる構成要素として、その内容(「改革とは何か?」の「何」)については4つ、過程(「改革は、いかに推移するか?」の「いかに」)については三つを選択した。これらの区分はかなり保守的である。すなわち「何」を構成するのは、財政、人事、組織および実績測定であり、「いかに」を構成するのは、上意下達/下意上達、法律関連の側面、および組織化の過程である。これらの見出しは、以下の項において再検討された後、第4章第10節(4.10)で最終的に概観する。