3.3 国家の基本構造
ここでは二つの基本的側面がある。最初のひとつは、まず権威の‘垂直’方向の分散の程度―権力が、政府の異なる階層間で、どれだけ共有されているか―である。この側面には、大きく分けて三つの種類がある。すなわち中央集権制の権力集中型、中央集権制だが権力分散型、連邦制(これらについては、もう少し後で説明する)である。第二の側面は、中央政府レベルでの‘水平’方向の調整の程度―中央の行政官が、すべての省庁が確実に一丸となって同一方向に向かうことによって、どれほど「みずから行為をまとめ上げる」ことができるか―である。この側面は、「きわめて調整されている」から「はなはだしく分散されている」までの幅がある。
最初の側面から見ると、権力の垂直方向の分散は連邦組織において最大となり、中央集権型の権力集中型で最小となる傾向がある。中央集権国家においては、国家権力の分割を‘憲政上侵害’されることはない。中央政府は、たとえなんらかの権力が地方政府に委譲されるにせよ、最高主権を保持する。連邦国家では、憲法が、さまざまな組織間で―たとえば、合衆国では連邦政府と州政府との間で、ドイツでは連邦政府と‘ランダー(行政区画の州の複数形)’との間で―いくつかの主権の分割を規定している。本書の研究で取り上げられた国々のうち、オーストラリア、カナダ、ドイツ、合衆国は連邦国家である。
しかしながら、「中央集権」国家というカテゴリーをさらに分類したい。これらのうちいくつかは高度に中央集権化されているかもしれないし(少なくとも1980年代の分権改革までのフランス、ニュージーランド、イギリス)、きわめて分権化されているかもしれない(たとえば、北欧諸国。ここでは多くの権限が各省庁から出先機関や部局に委譲されるし、地方自治体(郡、市町村など)は制定法によってよく保護され、中央政府からの独立性を有している。)実際、こうした状況にあって、中央集権国家における‘事実上の’分権化の程度は、連邦政府の分権化と等しいこともあれば、上回ることもある。
強調されるべきは、地方自治の二つの形態―一つの中央集権国家の中での分権化と、国家を形成している政治システム内の連邦制度の程度―の区別は、法律用語のうちの一つの技術用語である。現実においては、類似性が強調されなくてはならないが、地方の自立の要求は、同じであるかもしれないし、その国の法律の枠組みのせいで異なる表現をとるかもしれない(Lane and Ersson, 1991, p.207)。