1. 調査・研究の目的と概要
労働災害は、人的要因(ヒューマン・エラー)である慣れ、過信、錯誤、または手抜きなどの不注意によるものが少なくない。しかしながら、人間の不注意は避け難いのも事実であり、不安全な状態への人間の適応力を過大に期待しない対策が必要である。
このような観点から、第7次船員災害防止基本計画及び毎年の船員災害防止実施計画に基づき、船種または業種別に災害が多発している作業を取り上げて、いずれも委員会を設置のうえ、人的要因による災害の防止に有効な対策の一つである「作業の標準化」、即ち適切な「作業マニュアル」の作成を推進する事業に取り組んできた。
国土交通省の作成による平成11年度の『船員災害疾病発生状況報告(船員法第111条)集計書』によると、内航船(内航海運及び国内旅客船事業に従事する船舶)の乗組員数は、28,885人で、外航船を含めた汽船全体の乗組員数36,087人の80.0%を占めており、内航船員は、汽船乗組員の主流となっている。
一方、内航船の休業3日以上の死傷災害(以下、災害という。)人数は、汽船全体の被災者436人の92.4%である403人、内航船の乗組員千人当たりの災害発生率(以下、発生率という。)は、14.0と高い率を示している。中でも従来から災害が多発しているのは、前記集計書の船内作業区分によると、「出入港作業」、「荷役作業」、及び「整理・管理作業」(以下、「整備・修理及び貨物倉のクリーニング作業」という。)の3作業であり、いずれも全災害の20〜30%で推移している。
「出入港作業」及び「荷役作業」は、平成11年度で取り上げているので、今年度は、「整備・修理及び貨物倉のクリーニング作業」を調査・研究の対象作業とした。しかしながら、この対象作業は、船内の多様な各種作業の集合体であり、また、各船の船体構造や機器の種類、乗組員数などによって違いがある各作業のマニュアルについて、個々に言及することは、期限の面からも困難である。作業マニュアルの一般的な作成要領や指針については、前回の『作業の標準化(内航船の出入港及び荷役作業)のための調査研究報告』に収録してあるので、今回の報告書では、各社・各船において、該当作業のマニュアルを作成または見直しするに当たっての留意事項及び参考事項を、災害統計の分析やアンケート調査、及び乗船調査に基づき取り纏め作成する。
《注》整備・管理作業(整備・修理及び貨物倉のクリーニング作業)
当局の統計上の船内作業区分に基づくもので、機械、器具、用具等の整備・修理及び清掃片付け、または錆落とし、塗装及びこれらに関連する一連の作業をいう。なお、貨物倉のクリーニング作業とは、貨物積載区画及びタンクの掃除作業をいう。