6. まとめ
本研究開発は、4ヶ年計画で行って来たものであるが、本年度は、評価用地上疑似衛星装置の試作として、基準時刻制御部等の開発を行うと共に、システムの性能解析、評価を行うためのツールの作成等を行った。
これらの開発により、昨年までに開発した試作装置の各部位と合わせ、地上疑似衛星全体のシステム開発を行ったことになり、今後この、システムの総合的な評価解析を実施できる段階に達したことになる。
本年度は、室内でのベンチ・テストを行い、テストを通して得られた擬似距離精度、及び地上疑似衛星装置信号強度に起因する様々な測定データと解析結果により、地上疑似衛星装置とそれを利用するGBASのCAT-II/III高カテゴリー精密進入の基本性能及び特性を十分に把握することが出来た。
ICAOの検討においても、特にカテゴリーII或いはIIIのような高カテゴリーの精密進入では、GPSとディフアレンシャルシステムの組合わせのみでは、主要な航法要件である有効性、精度、継続性、完全性の達成が危倶されている。しかし本事業の今年度成果により、地上に設置された地上疑似衛星装置が高カテゴリー精密進入システムを補強できる可能性が示されたと考えられる。
次年度以降については、フィールドでの静的状態での特性試験に引き続き、飛行試験による動的な特性の測定を行い、地上と機上を含めた、より実用に近い状態で地上疑似衛星装置の基本的なデータ取得及び性能評価を行う予定である。これらの結果は、国際民間航空機関(ICAO)が現在強力に進めているCNS/ATM計画における新しい航法システムの評価・検証にかかわる貴重な情報としてICAOにおける高カテゴリー精密進入システムの技術標準の作成において大いに活用されると期待される。
なお、昨年度の成果として平成12年度10月〜11月に行われたGNSSパネルWG/B会議では、我が国で行っている、本研究内容を発表して各国の多大な評価を得た。
引き続いて同国際会議パネルで行われる、国際標準規格討議に日本の意見として本研究成果を反映することとし、国際貢献に寄与する。
今後我が国に衛星利用の精密進入を導入することの可否、また導入する場合の方式決定における判断のための基礎資料となることが求められている。