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まえがき

 

国際民間航空機関(ICAO)によって、1983年に設立された「次世代航空航法システム特別委員会」(FANS委員会)で検討が始まって以来、約20年近い年月が経過しているが、その後の活動の中で、1998年に「Global Air Navigation Plan for CNS/ATM Systems」がICAO理事会で承認され、衛星を核とした、航法システムがより具体化してきた。

特に最近ではGPS等を中心とした精密進入カテゴリーI迄のSBAS(衛星航法補強システム)或いはGBAS(地上航法補強システム)によるSARPs(“ICAOによる”標準及び勧告方式)作成が急ピッチで行われており、2001年11月の発行を目指して最終的な詰めがGNSSP(全地球的航法衛星システムパネル)で積極的に行われている。

今後検討が進められる精密進入カテゴリーIIとIIIの様な高カテゴリーの精密進入においてはカテゴリーI以上の高い精度のみならず有効性、継続性、完全性(保全性)の上でも、より高い機能が要求されることになる。この場合に高い要求性能を達成するために、衛星による補強だけではなく地上にあってGPS衛星と同様のレンジング機能をもつ空港シュードライト(Aiport Pseudolite-APL)と呼ばれる地上疑似衛星の開発提案が促進され、SARPsへの導入が審議されることになる。

昨年度までに送信機としての地上疑似衛星の開発・設計、ハードウエアの製造を行い、今年度は、GPS受信機及びAPL受信機を組合わせて使用するベンチテストを実施した。本べンチテストにより地上に設置される地上疑似衛星特有の課題である1]地上疑似衛星信号の受信レベルによるシュードレンジの変化、2]地上疑似衛星によるGPS信号受信への影響、及び3]GPSと地上疑似衛星との時刻同期等に関しての基本的データの取得を行うことができた。本報告書はこれらの今年度の成果を纏めたものである。

次年度以降については、フィールドでの静的状態での特性に引き続き、飛行試験での航空機の移動による動的な特性の測定を行い、地上と機上を含めた、より実用に近い状態で地上疑似衛星システムの基本的なデータ取得及び性能評価を行う予定である。

これらの結果は地上疑似衛星システムとしての評価・検証にかかわる貴重な情報としてICAOに提出されることが予定されている。即ち、今後の高カテゴリー精密進入についてICAOがSARPsを作成する上で多大な貢献が期待されている。

また我が国に衛星利用の精密進入を導入することの可否、また導入する場合の方式の決定に資することが大きい。

 

平成13年3月

(財) (航空振興財団)

地上疑似衛星を用いた精密進入援助システムの開発委員会

委員長 水町守志

 

 

 

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