1970年6月1日生まれ。オバーリン大学、イエール大学大学院を経て、1999年ミシガン大学博士課程修了。これまで数々の賞や奨学金を獲得。作品は、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツをはじめ、アスペン音楽祭、ダーティントン音楽祭でも演奏される。
programme note
オーケストラのためのアクィロ
AQUILO for orchestra
「アクィロ」は北東の風の古典的な名称で、古代ローマの建築家ヴィトルヴィウスがその「建築10巻」のなかで示している。ヴィトルヴィウスは、彼の書いた熱と水蒸気からはじまる風についての理論は、「好空気」――ちいさな開□部から水を満たした青銅の球体――による実験で証明されていると述べている。この「好空気」を熱すると急激に蒸気が漏れるので、それが当時の人々に風も同じようにして起こるに違いないと思わせた。ヴィトルヴィウスはこの理論をさらに進めて、広大な円盤上の地球の上に吹く風には8種類があると考える。
曲は、まず聴覚的「好空気」、気体の噴出を生みだす火と水の混合の音楽的表現とともにはじまる。この気体の噴出が風「アクィロ」で、大きな聴覚空間のなかで発展するひとつの旋律として聴こえる。その後、これに別の三つの旋律が加わり、この四つが、強力な方向転換に達して新たな四つの旋律線が導入されるまで推進力を増進してゆき、すべてが空間の中を動きながらエネルギーと複雑性を蓄積してゆく。
八つの旋律的な<風>が、それぞれ個の<感触>をもたらした後、最初の旋律が戻ってくる。「アクィロ」は、曲がその構成元素に分解される状況になるまで進行し、そして創作の最初のひらめきへと戻ってゆく。
FINALIST'S PROFILE
ルーク・ベットフォード(イギリス)
Luke Bedford, UK